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2018 年度 実績報告書

リソソームでの自然免疫系と代謝系のクロストークに関わる分子細胞基盤の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16H06388
研究機関東京大学

研究代表者

三宅 健介  東京大学, 医科学研究所, 教授 (60229812)

研究期間 (年度) 2016-05-31 – 2021-03-31
キーワードToll様受容体 / 自然免疫
研究実績の概要

Toll-like receptor (TLR)は病原体成分を認識するセンサーである。核酸特異的TLRは、リソソームに局在し、その応答制御には、リソソームにおける核酸分解をはじめとする代謝機構が深く関与している。そこで、本研究では、核酸の分解、代謝機構と核酸認識機構の関係を明らかにする。本年度の研究実績として以下のことが明らかとなった。リソソームは細胞の活性化とともに細胞内を移行する。RNA特異的TLRであるTLR3、TLR7もリソソームに局在するために、リソソームとともに細胞内を移行する。本年は、TLR3についての解析を報告した。興味深いことに、TLR3は低分子量タンパク質Rab7aに会合しており、細胞内移行もRab7aによって制御されていることが明らかとなった。細胞内移行の方向性は核から細胞膜直下までの、いわゆるAnterogradeであった。TLR3については、さらに最初にmTORC2がリクルートされ、TLR3の細胞内移行、炎症性サイトカイン産生、I型インターフェロン産生に必須であった。つまりTLR3のマスター制御因子であることが明らかとなった。一方、I型インターフェロン産生に特異的にmTORC1が必要であるが、mTORC1との会合のためにはTLR3の細胞内移行が重要であるということが分かった。TLR3が細胞内移行することで、TLR3とmTORC1の会合、さらにはI型インターフェロン産生に必須のシグナル伝達分子であるTRAF3との会合が可能となるという結果を得た。これらの結果は、I型インターフェロン産生には、TLR3が細胞膜直下まで移行する必要があることが明らかとなった。この結果はシグナル伝達、リソソームの細胞内移行、代謝センサーを関連付ける結果であり、本研究の当初の目的の一つである自然免疫と代謝の連携を細胞生物学的に理解することができた結果といえる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初予定した計画のうち、TLR3の細胞内移行の分子基盤解明については、予定通りに解析が進み、論文を発表することができた。興味深いことに、TLR3の細胞内移行は、低分子量Gたんぱく質Rab7aによって制御されとり、TLR7の場合と異なることが明らかとなった。しかしながら、細胞内移行の方向性、I型インターフェロン産生との関係はTLR7の場合と同様であった。昨年度に発表したTLR7の細胞内移行についての結果と合わせて、現在Reviewを投稿し、リバイス中である。TLRの細胞内移行、I型インターフェロン産生、代謝センサーmTORC1による制御を統合して理解するという当初の目標を一部達成できたと考えている。TLR3の応答については、mTORC2がマスター制御因子であることが明らかになったことから、今後、mTORC2の役割について、特に代謝センサーとしての機能について、検討を進めてゆく予定である。
TLR7については、自己免疫疾患の病態におけるArl8bの関与について検討した論文も発表した。今後、予定していたTLR7応答におけるヌクレオシドの役割についての検討を進めてゆく。当初予定していた遺伝子欠損マウスの解析は順調に進んでいる。現在、その表現型の分子基盤についての解析を進めている。RNaseについても、現在予定していた遺伝子改変マウスの解析を順調に進めているところである。解析している表現型におけるRNAセンサーの役割を明らかにするために、いろいろなRNAセンサーの遺伝子改変マウスとの交配を進めており、表現型への影響を検討する予定である。このように、当初予定していたプロジェクトは予定通り進展しており、順調であるといえる。

今後の研究の推進方策

TLR7、TLR3の細胞内移行の分子基盤解析については、当初予定していた目標の多くを達成できたと考えている。今後の展開としては、TLR3のマスター制御因子として同定したmTORC2についての解析を進める必要がある。特にmTORC1がアミノ酸のセンサーとして解析が進んでいることに比較して、mTORC2の解析が遅れている。TLR3のマスター制御因子としてのmTORC2の解析を通して、mTORC2そのものの理解に貢献したいと考えている。
TLR7のヌクレオシドに対する応答についての解析は順調に進んでおり、このまま計画通りに進めてゆく。現在、解析を予定していたマウスの表現型についての解析を一通り終了し、本年度はその分子基盤を理解すべく、細胞株を用いた解析を並行して進めてゆく。さらに、ヒトにおけるTLR7のヌクレオシドに対する応答についての解析も進めており、本年度も継続して進めてゆく。マウスで得られたTLR7のヌクレオシドに対する応答がヒトにおいても保存されているのか、検討する。RNaseの解析については、現在、予定していた遺伝子改変マウスの解析を進めている。表現型にTLRが関与する可能性を考慮して、RNA特異的TLRの応答に必須の分子Unc93B1や個々のRNA特異的TLRの遺伝子欠損マウスと交配を進めている。さらに、TLR以外のRNAセンサーの可能性を考慮して、RIG-I、MDA5のシグナル伝達分子であるMAVSの遺伝子欠損マウスとの交配も進める。これらの解析を通して、RNaseがどのRNAセンサーの応答を制御しているのか、分子レベルでの解明を目指す。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件、 招待講演 5件)

  • [雑誌論文] Cytidine deaminase enables Toll-like receptor 8 activation by cytidine or its analogs2019

    • 著者名/発表者名
      Furusho Katsuhiro、Shibata Takuma、Sato Ryota、Fukui Ryutaro、Motoi Yuji、Zhang Yun、Saitoh Shin-ichiroh、Ichinohe Takeshi、Moriyama Masafumi、Nakamura Seiji、Miyake Kensuke
    • 雑誌名

      International Immunology

      巻: 31 ページ: 167~173

    • DOI

      10.1093/intimm/dxy075

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ADP-ribosylation factor-like 8b is required for the development of mouse models of systemic lupus erythematosus2019

    • 著者名/発表者名
      Saitoh Shin-Ichiroh、Saitoh Yoshiko Mori、Kontani Kenji、Sato Katsuaki、Miyake Kensuke
    • 雑誌名

      International Immunology

      巻: 31 ページ: 225~237

    • DOI

      10.1093/intimm/dxy084

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Combating herpesvirus encephalitis by potentiating a TLR3?mTORC2 axis2018

    • 著者名/発表者名
      Sato Ryota、Kato Akihisa、Chimura Takahiko、Saitoh Shin-Ichiroh、Shibata Takuma、Murakami Yusuke、Fukui Ryutaro、Liu Kaiwen、Zhang Yun、Arii Jun、Sun-Wada Ge-Hong、Wada Yoh、Ikenoue Tsuneo、Barber Glen N.、Manabe Toshiya、Kawaguchi Yasushi、Miyake Kensuke
    • 雑誌名

      Nature Immunology

      巻: 19 ページ: 1071~1082

    • DOI

      10.1038/s41590-018-0203-2

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Cleavage of Toll-Like Receptor 9 Ectodomain Is Required for In Vivo Responses to Single Strand DNA2018

    • 著者名/発表者名
      Fukui Ryutaro、Yamamoto Chikako、Matsumoto Fumi、Onji Masahiro、Shibata Takuma、Murakami Yusuke、Kanno Atsuo、Hayashi Takuto、Tanimura Natsuko、Yoshida Nobuaki、Miyake Kensuke
    • 雑誌名

      Frontiers in Immunology

      巻: 9 ページ: 1491

    • DOI

      10.3389/fimmu.2018.01491

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Mechanisms controlling nucleic acid-sensing Toll-like receptors2018

    • 著者名/発表者名
      Miyake Kensuke、Shibata Takuma、Ohto Umeharu、Shimizu Toshiyuki、Saitoh Shin-Ichiroh、Fukui Ryutaro、Murakami Yusuke
    • 雑誌名

      International Immunology

      巻: 30 ページ: 43~51

    • DOI

      10.1093/intimm/dxy016

    • 査読あり
  • [学会発表] Mechanisms Controlling Innate Immune Responses to Nucleic Acids2019

    • 著者名/発表者名
      Kensuke Miyake
    • 学会等名
      The 3rd annual Chiba-UCSD symposium
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Mechanisms Controlling Innate Immune Responses to Nucleic Acids2018

    • 著者名/発表者名
      Kensuke Miyake
    • 学会等名
      International Union of Biochemistry and Molecular Biology 2018
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Mechanisms Controlling Innate Immune Responses to Nucleic Acids2018

    • 著者名/発表者名
      Kensuke Miyake
    • 学会等名
      51st annual meeting of the society for leukocyte biology and 15th biennial meeting of the international endotoxin and innate immunity society
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Mechanisms Controlling Innate Immune Responses to Nucleic Acids2018

    • 著者名/発表者名
      Kensuke Miyake
    • 学会等名
      The 9th Asian congress of pediatric infectious diseases
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Mechanisms Controlling Innate Immune Responses to Nucleic Acids2018

    • 著者名/発表者名
      Kensuke Miyake
    • 学会等名
      The 47th annual meeting of the Japanese society for immunology
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2019-12-27  

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