研究課題/領域番号 |
16H06388
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三宅 健介 東京大学, 医科学研究所, 教授 (60229812)
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研究期間 (年度) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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キーワード | Toll様受容体 / 自然免疫 |
研究実績の概要 |
Toll-like receptor (TLR)は病原体成分を認識するセンサーである。核酸特異的TLRは、リソソームに局在し、その応答制御には、リソソームにおける核酸分解など、代謝機構が深く関与している。そこで、本研究では、核酸の分解などの代謝機構と核酸認識機構の関係を明らかにする。本年度は、リソソームにおける核酸代謝と核酸特異的TLR応答について検討した。具体的には、リソソームで機能するDNA分解酵素、RNA分解酵素とDNA、RNAに応答する核酸特異的TLRとの関係についての解析を進めた。細胞外、あるいはリソソームで機能する2種類のRNase、4種類のDNaseについて、遺伝子改変マウスの作成を進めた。さらに、RNase、DNase、それぞれ1系統ずつ先行して得られたものについては解析も進めた。DNaseの欠損マウスについては、明らかな表現型が認められなかったが、DNAセンサーであるTLR9との2重欠損マウスの作成を進めた。また、RNaseについては、単球・マクロファージが増加するという表現系が認められたため、その解析を進めるとともに、その表現型にRNA特異的TLRが関与しているかどうか明らかにするために、TLR3、TLR7の遺伝子欠損マウスとの交配を進めている。TLR7は、構造生物学的解析から、RNAの分解産物であるリボヌクレオシドと結合することが明らかになっている。リボソームにおけるヌクレオシド代謝に関係する分子として、ヌクレオシドのトランスポーターについても、我々は遺伝子改変マウスを作成し、その解析を進めた。その表現型におけるTLR7の役割を明らかにするために、TLR7との2重欠損マウスの作成も完了し、解析を進めてきた。その結果から、ヌクレオシドのリソソームでの蓄積による表現型にTLR7が関与している可能性が得られており、現在さらに詳細な解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TLR3、TLR7と代謝センサーmTORC1、mTORC2との関係については、順調に解析が進み、論文を発表することができた。本年度は主に核酸分解酵素と核酸特異的TLRとの関係についての解析を進めてきた。残念ながら論文発表にまでは進んでいないが、DNase、RNaseについて、遺伝子改変マウスの作成、TLR欠損マウスとの交配などは着実に進めてきた。さらに、先行して得られているマウスについては、核酸特異的なTLRに依存する表現型が得られており、順調に進んでいる。次年度に、結果がさらに多く得られることが期待できる。また、ヌクレオシドに対するTLR7の応答についての解析も、当初予定していたマウスの作成、交配は終了し、現在解析を進めており、結果が得られつつある。得られた結果から、新たなマウスの作成、交配が必要であるという結論に至り、現在進めている。このプロジェクトについても、当初の予想よりもさらに展開する可能性が出てきており、次年度にさらに結果が得られることが期待される。次年度に論文投稿にまで進めるべく、解析を進めている。このように、当初予定していたプロジェクトは停滞することなく進展しており、順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
TLR3とmTORC2との関係について、今後さらに解析を進める必要がある。特にmTORC1がアミノ酸のセンサーとして解析が進んでいることに比較して、mTORC2についての理解が遅れている。TLR3のマスター制御因子としてのmTORC2の解析を通して、mTORC2そのものの理解に貢献したいと考えている。 TLR7のヌクレオシドに対する応答についての解析は、当初の予想を超えた展開を見せており、新たなマウスの作成、交配、解析が必要となってきた。同時にTLR7のヌクレオシドに対する応答の分子基盤を理解するために、細胞株を用いた系を用いた解析を進めてゆく。特に、ヒトではTLR7に加えて、TLR8も機能しており、ヒトのTLR7、TLR8についても、細胞株を中心に解析を進めてゆく。 DNase、RNaseの解析については、現在の解析を進める。特にDNaseの遺伝子改変マウスについては、定常状態で表現型が認められない系統があり、その場合には組織損傷を誘導し、DNAを放出させることで、野生型マウスと比較する。また、TLR9との2重欠損マウスを用いることで、その表現型がTLR9依存性かどうか、検討する。RNaseの遺伝子欠損マウスについては、すでに表現型が得られており、その表現型がどのRNA特異的TLRによるものか、明らかにしてゆく。また、実際にリソソームにRNAが蓄積しているのかどうかについても検討する必要がある。そこで、密度勾配遠心法を用いて、リソソームを調整し、RNAが蓄積されているかどうかについて、検討する。さらに、そのRNAの解析として、次世代シークエンスも試みる。また、実際にRNaseが細胞のどこに局在するのかについても検討する必要がある。そこで、RNaseに対する抗体も作成することを予定する。これらの解析を通して、核酸の分解と核酸認識の関係を明らかにする。
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