研究課題
生活習慣病を基軸とする脂肪肝やそれに伴う肝障害の進行と共に近年増加傾向にあるNASHはその一部が肝癌へと進行することから有効な予防・治療法、診断法の開発が求められている。これまでの研究によりNASH肝癌において癌抑制効果をもつことが既に明らかになっているAIMは、体内でIgM五量体に結合することで不活性な形で安定化しており、IgMから解離して活性型となってはじめて癌抑制効果を発揮すると考えられている。そこで、本研究ではIgMからAIMを解離させるメカニズムを明らかにし、内在性AIMの活性化によるNASH肝癌治療を目指す。同時に、血中AIM濃度や活性型AIM量と疾患の関連性を見出すことで、新しいNASH肝癌の早期診断・予後予測の樹立を目的とする。H28年度は、AIM活性化のメカニズムを明らかにするためAIMとIgMの結合に重要であるアミノ酸の同定に取り組み、AIMとIgMの結合部位ならびに結合に重要であるアミノ酸配列が明らかになった。また、AIMを活性化する、すなわちAIMをIgMから解離させるため活性化因子について探索を行い、生理的活性化因子を含むと考えられる細胞株の発見に至った。さらに、活性型AIMのみを検出する抗ヒトAIMモノクローナル抗体のクローンの選択に成功し、活性型AIM検出ELISA系を樹立した。これらの系を用いてNAFLやNASH、NASH-HCC患者の血清に対して活性型および総AIM濃度の定量を行ったところ、NASH-HCC患者ではNAFLおよびNASH患者よりも優位に活性型AIM濃度が高いことが示された。このことから、活性型AIMの検出がNASH-HCCの診断に有用である可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
H28年度は当初目標にしていたAIMとIgMの結合ドメインの同定、活性型(遊離型AIM)に対するモノクローナル抗体の取得とそれによる活性型AIM検出ELISAの構築を達成し、またさらに肝疾患患者における活性型AIM測定を行うことで、疾患とAIMの関連性を明らかにすることができた。患者における解析はH29年度以降に予定していた研究内容であり、当初の予定以上の進展が得られた。一方、活性化因子の探索においては、その分子の同定には至らなかったが、活性化が起こる条件の絞り込みまでは達成した。総合的に見て、おおむね順調に進展していると判断できる。
活性型AIMのハイスループットな検出系を構築したことから、今後は生理的な活性化因子だけでなく、小分子化合物などを含めた活性化因子のスクリーニングを精力的に進めていきたい。得られた因子を用いて実際にHCCの予防や治療効果を含めた生理的な機能について研究を進め、NASH肝癌予防・治療方法へと応用していく。さらに。活性型AIM検出ELISAによる患者血清の測定を引き続き進め、AIMによるNASH-HCC診断法の樹立の検討を進めていく。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 1件、 招待講演 5件)
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