研究課題/領域番号 |
16H06391
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
赤司 浩一 九州大学, 医学研究院, 教授 (80380385)
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研究分担者 |
竹中 克斗 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (30301295)
菊繁 吉謙 九州大学, 医学研究院, 助教 (40619706)
曽我 朋義 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 教授 (60338217)
宮本 敏浩 九州大学, 医学研究院, 准教授 (70343324)
国崎 祐哉 九州大学, 大学病院, 講師 (80737099)
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研究期間 (年度) |
2016-05-31 – 2021-03-31
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キーワード | 白血病幹細胞 / TIM-3 / シグナル |
研究実績の概要 |
我々はTIM-3分子が骨髄異形成症候群、骨髄増殖性腫瘍からの白血病(AML)への進展など、ヒト骨髄系白血病幹細胞に共通して発現していることを報告した。AML幹細胞はTIM-3 ligandであるgalectin-9を分泌し、"動的"自己再生シグナルを惹起するオートクラインメカニズムを有する。さらにTIM-3陽性AML幹細胞の一部にPD-1が発現する分画を見出した。このPD-1+TIM-3+幹細胞分画にはG0期細胞が濃縮され、PD-1を介したシグナルはAML幹細胞に"静的"シグナルを惹起する可能性が示唆された。本研究では、TIM-3とPD-1それぞれのリガンドにより惹起される"動"と"静"のシグナルの本質を明らかにするために、ヒトAML検体を対象として新規異種移植システムや超高感度メタボロームを含むオミクス解析を行う。これらの研究結果をもとに骨髄系腫瘍全てに共通の幹細胞制御法の開発に繋ぐことを目的とする。 平成30年度は、TIM-3シグナルについても白血病幹細胞特異的なTIM-3シグナル伝達分子群としてHCK, p-120 cateninを同定し、TIM-3シグナルがWnt ligand非存在下でcanonical Wnt pathwayの活性化を生じることを見出した。また、T細胞におけるTIM=3シグナルともこのシグナル下流分子の発現が異なることも見出した。さらに代謝研究を軸とした全ての骨髄系白血病幹細胞に共通する幹細胞維持機構の解明に取り組んだ。その結果、特定のアミノ酸代謝経路が骨髄系白血病幹細胞特異的に活性化していることを見出し、特定のアミノ酸代謝経路の阻害が、in vitro, in vivoで白血病幹細胞の生存、増殖、自己複製が抑制されることを見出し、その分子メカニズムとして、エピゲノム制御を介した幹細胞性制御機構を新規に同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28-30年度にある程度の症例数の急性骨髄性白血病幹細胞分画のPD-1分子の発現について、解析を終了しています。また、研究対象の一つであるTIM-3下流シグナルに関しては、平成30年度に下流のSH2結合ドメインに結合する白血病幹細胞特異的なSrc family kinaseを同定しました。平成30年度にはさらにそのSrc family kinaseの下流でシグナル伝達を行う分子群の同定を完了しています。さらに、平成30年度は骨髄系がん細胞に共通する維持機構について上述の網羅的メタボローム解析のアプローチにより、骨髄系がん細胞に共通する特徴的なアミノ酸代謝経路の絞り込みに成功しており、in vitro, in vivoでのヒト白血病幹細胞における代謝経路の阻害実験も完了し、代謝経路阻害が白血病幹細胞を標的とした治療戦略になりうることを確認した。以上の経過から予定していた本研究課題については概ね順調に進展していると考えられます。
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今後の研究の推進方策 |
(1)骨髄系がん幹細胞におけるPD-1シグナルの機能解明 昨年度に引き続き、純化したPD-1陽性白血病幹細胞の下流シグナルの探索を継続する。具体的には、純化したPD-1陽性白血病幹細胞に対して、PD-L1/L2刺激を行い網羅的遺伝子発現解析による比較を行い、既知のT細胞におけるPD-1シグナルとの対比を行いながら下流シグナルの解明を行う。さらに昨年度に引き続き、xenograftモデルを用いたPD-1の発現の有無に伴う幹細胞活性の差について解明を継続する。 (2)TIM-3シグナル探索 昨年度の研究の結果、TIM-3シグナルが直接的にcanonical Wnt signalingを活性化することおよび、そのシグナル伝達に関与する白血病幹細胞特異的なSrc family kinaseとしてHCKを同定した。平成31年度はさらにこのシグナル伝達経路について分子メカニズムを明らかにする。具体的には TIM-3分子の下流で作用するHCKがどのようにしてcanonical Wnt pathwayの活性化を生じるのかについて、TIM-3シグナルの下流で動く分子群を同定する。平成30年度の解析結果から、白血病幹細胞においてp-120 cateninがHCKの下流でリン酸化されることを見出しており、p-120 cateninと Wnt pathwayについて詳細に検討を行う。 (4)網羅的メタボローム解析のデータベース構築を継続し、ヒト白血病幹細胞に特異的な代謝経路の同定を昨年度に引き続き継続する。平成29-30年度に同定した特定のアミノ酸代謝経路について、具体的にどのような分子機構で白血病幹細胞の幹細胞性維持に寄与するのかについて、代謝経路の阻害の前後で網羅的遺伝子発現解析、比較し解明を試みる。
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