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2018 年度 実績報告書

関節軟骨の生体恒常性の維持および破綻機構の統合的理解に基づく革新的医療技術の開発

研究課題

研究課題/領域番号 16H06393
研究機関大阪大学

研究代表者

西村 理行  大阪大学, 歯学研究科, 教授 (60294112)

研究分担者 波多 賢二  大阪大学, 歯学研究科, 准教授 (80444496)
村上 智彦  大阪大学, 歯学研究科, 講師 (50510723)
高畑 佳史  大阪大学, 歯学研究科, 助教 (60635845)
研究期間 (年度) 2016-05-31 – 2021-03-31
キーワード関節軟骨 / 変形性関節症 / 転写因子
研究実績の概要

1.すでに同定したPrg4遺伝子の発現を上昇させる転写因子のノックアウトマウスをin situ hybridization法にて解析すると、Prg4の発現の低下が観察された。また関節軟骨特異的ノックアウトマウスでも、Prg4の発現が低下することをRT-qPCRにて確認した。
2.Prg4遺伝子に結合する分子を探索すると、Prg4遺伝子の発現を低下させるリプレッサーを同定した。このリプレッサーが上記の転写因子と結合することを、免疫共沈降法にて確認できた。またこのリプレッサーの遺伝子を欠失するノックアウトマウスをCas9ゲノム編集法にて作製したところ、そのホモ欠失マウスは著明な骨格形成不全を呈していた。
3.関節軟骨の恒常性の維持機構を明らかにするために、関節軟骨表層細胞特異的サイトカインであるGDF5遺伝子座に蛍光タンパク質ZsGreenを挿入したノックインマウスを作製した。このGDF5-ZsGreenノックインマウスは、歩行異常などの変形性関節症様症状を呈した。またGDF5と同じBMPファミリーに属するBMP2との作用をMicroarray解析にて検索したところ、GDF5とBMP2は、ほぼ同様の遺伝子の発現を増加させることが判明した。したがって、GDF5はBMP2と同様の作用を有している可能性が推測された。
4.SFZ細胞と成長軟骨細胞の特性の違いを明らかにするために、成長軟骨細胞の代表的マーカーである2型コラーゲン(Col2a1)遺伝子の発現を関節軟骨にて検索した。マウス関節軟骨組織をin situ hybridization(ISH)法にて解析した結果、関節軟骨の一層に存在するSFZ細胞は、Prg4を発現し、2型コラーゲン遺伝子(Col2a1)を全く発現しないことを明らかにした。したがって、Prg4とCol2a1は、SFZ細胞あるいは成長軟骨細胞各々に特異的である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1.Prg4遺伝子を制御する転写因子とそのリプレッサーを同定し、両者の作用機序を分子、細胞およびin vivoで明らかにした。
2.前年度までに変形性関節症の発症に関与する転写因子として同定したSox4およびSox11の機能解析を完了して、論文公表した。
3.関節軟骨細胞の新規のマーカー遺伝子の候補群ならびに変形性関節症の早期マーカーとしてPrg4タンパク質の分解産物を同定した。
4.Prg4遺伝子に発光タグHiBiTを挿入したノックインマウスを作製し、変形性関節症に対する新規治療薬を探索するできるハイスループットスクリーニングシステムを構築できた。
以上の事由を総合的に考慮し、おおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

1.GDF5遺伝子を発現制御に関わる転写因子を同定するために、enChIP法による遺伝子クローニングを実施する。同定された転写因子のin vitroでの検索は、ルシフェラーゼレポーターアッセイ、ChIP解析、およびRT-qPCR法による発現解析にて実施する。in vivoでの解析を行うために、Cas9ゲノム編集法にて当該遺伝子のノックアウトマウスを作製する。
2.変形性関節症の治療薬を探索するために、関節軟骨の機能に重要なプロテオグリカンであるPrg4の発現を増加させる低分子化合物の探索を行う。Prg4-HiBiTノックインマウスから関節軟骨表層(SFZ)細胞を分離、培養して、低分子化合物ライブラリーを作用させ、HiBiTルシフェラーゼの活性を指標にスクリーニングを実施する。得られたリードコンパウンドの作用は、in vitroで解析を進めるとともに、Prg4-HiBiTノックインマウスに投与して、in vivoでの検索を行う。in vivoでの検索は、発光イメージングによりライブイメージングを実施する。
3.SFZ細胞の恒常性の維持に関わるGDF5の役割を明らかにする。すでに作製できたGDF5-ZsGreenノックインマウスを交配して、GDF5ノックアウトマウスを作出し、そのマウスよりSFZ細胞を採取する。同腹の野生型マウス由来のSFZ細胞、GDF5ノックアウトマウス由来のSFZ細胞、その細胞にGDF5あるいはBMP2を作用させた細胞からRNAを抽出し、RNA-SeqあるいはMicroarray解析にてそれぞれの遺伝子発現プロファイルを検索する。その結果に基づいて、SFZ細胞におけるGDF5の標的遺伝子を明らかにする。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)

  • [雑誌論文] Sox4 is involved in osteoarthritic cartilage deterioration through induction of ADAMTS4 and ADAMTS52019

    • 著者名/発表者名
      Takahata Yoshifumi、Nakamura Eriko、Hata Kenji、Wakabayashi Makoto、Murakami Tomohiko、Wakamori Kanta、Yoshikawa Hiroshi、Matsuda Akio、Fukui Naoshi、Nishimura Riko
    • 雑誌名

      The FASEB Journal

      巻: 33 ページ: 619~630

    • DOI

      10.1096/fj.201800259R

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Cutting Edge: G Protein Subunit β 1 Negatively Regulates NLRP3 Inflammasome Activation2019

    • 著者名/発表者名
      Murakami Tomohiko、Ruengsinpinya Lerdluck、Nakamura Eriko、Takahata Yoshifumi、Hata Kenji、Okae Hiroaki、Taniguchi Shun’ichiro、Takahashi Masafumi、Nishimura Riko
    • 雑誌名

      The Journal of Immunology

      巻: 202 ページ: 1942~1947

    • DOI

      https://doi.org/10.4049/jimmunol.1801388

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Generation of orthotopically functional salivary gland from embryonic stem cells2018

    • 著者名/発表者名
      Tanaka Junichi、Ogawa Miho、Hojo Hironori、Kawashima Yusuke、Mabuchi Yo、Hata Kenji、Nakamura Shiro、Yasuhara Rika、Takamatsu Koki、Irie Tarou、Fukada Toshiyuki、Sakai Takayoshi、Inoue Tomio、Nishimura Riko、Ohara Osamu、Saito Ichiro、Ohba Shinsuke、Tsuji Takashi、Mishima Kenji
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 9 ページ: 1~13

    • DOI

      https://doi.org/10.1038/s41467-018-06469-7

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Runx2 is required for the proliferation of osteoblast progenitors and induces proliferation by regulating Fgfr2 and Fgfr32018

    • 著者名/発表者名
      Kawane Tetsuya、Qin Xin、Jiang Qing、Miyazaki Toshihiro、Komori Hisato、Yoshida Carolina Andrea、Matsuura-Kawata Viviane Keiko dos Santos、Sakane Chiharu、Matsuo Yuki、Nagai Kazuhiro、Maeno Takafumi、Date Yuki、Nishimura Riko、Komori Toshihisa
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 8 ページ: 1~17

    • DOI

      10.1038/s41598-018-31853-0

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Interaction of LEF1 with TAZ is necessary for the osteoblastogenic activity of Wnt3a2018

    • 著者名/発表者名
      Kida Jumpei、Hata Kenji、Nakamura Eriko、Yagi Hiroko、Takahata Yoshifumi、Murakami Tomohiko、Maeda Yoshinobu、Nishimura Riko
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 8 ページ: 1~10

    • DOI

      10.1038/s41598-018-28711-4

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Transcriptional network systems in cartilage development and disease2018

    • 著者名/発表者名
      Nishimura Riko、Hata Kenji、Nakamura Eriko、Murakami Tomohiko、Takahata Yoshifumi
    • 雑誌名

      Histochemistry and Cell Biology

      巻: 149 ページ: 353~363

    • DOI

      10.1007/s00418-017-1628-7

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Decreased sensory nerve excitation and bone pain associated with mouse Lewis lung cancer in TRPV1-deficient mice2018

    • 著者名/発表者名
      Wakabayashi Hiroki、Wakisaka Satoshi、Hiraga Toru、Hata Kenji、Nishimura Riko、Tominaga Makoto、Yoneda Toshiyuki
    • 雑誌名

      Journal of Bone and Mineral Metabolism

      巻: 36 ページ: 274~285

    • DOI

      10.1007/s00774-017-0842-7

    • 査読あり
  • [学会発表] Identification and functional analysis of novel target genes regulated by Runx2.2019

    • 著者名/発表者名
      Takahata Yoshifumi, Wakamori Kanta, Fujiwara Chica, Nakamura Eriko, Hata Kenji, Murakami Tomohiko, Nishimura Riko
    • 学会等名
      IFMRS 3rd Herbert Fleisch Workshop
    • 国際学会
  • [学会発表] 転写制御と骨格系疾患の分子機構2018

    • 著者名/発表者名
      波多 賢二、村上 智彦、高畑 佳史、西村 理行
    • 学会等名
      第60回 歯科基礎医学会
    • 招待講演
  • [学会発表] Role of transcription factors in cartilage development and diseases2018

    • 著者名/発表者名
      Nishimura Riko
    • 学会等名
      15th Bone Biology Forum
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 内軟骨性骨形成過程における転写因子の役割2018

    • 著者名/発表者名
      西村 理行
    • 学会等名
      第36回日本骨代謝学会学術集会学会
    • 招待講演

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公開日: 2019-12-27  

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