昨年度に研究環境がほぼ整えられたことから、本年度は昨年米国で収集した蒋介石日記のほか、中国国民党文書、孔祥熙文書、宋子文文書、熊式輝文書等の史料の本格的分析に着手した。 当初予定していた台湾国史館の閲覧規則変更により、第二年度に予定していたスタンフォード大学フーバー研究所、コロンビア大学稀覯書および手稿図書館での調査を先に実施した関係で、国史館での調査対象であった地方統治に関する史料の分析が第二年度以降でなければ実施できないことから、計画において課題とした、戦時下の党組織と運営、戦時下における社会変容と地方統治政策、戦時下の政軍関係と政策決定、戦時下の中央―地方関係のうち、戦時下の政軍関係と政策決定、戦時下の中央―地方関係から検討することとした。これらの分析を通じて、日中戦争開始直後の中央政府と地方政府である冀察政務委員会の関係と実態、ならびに日中戦争開始後の党・政・軍の関係と対日戦に関する具体的な政策決定過程を明らかにし、北京と台北のシンポジウムで報告するとともに、そこでの指摘を踏まえて論文として刊行した。 年度の後半においては、閲覧規則変更の混乱が落ち着いたことを踏まえ、当初の計画を実施するために必要な未公刊史料の収集のため、台北の国史館、中国国民党党史館、国家档案管理局において調査を実施した。 以上により、当初の研究計画は達成したが、引き続きこれらの史料の整理・データベース化を進めつつ、次の課題として戦時下の党組織と運営、戦時下における社会変容と地方統治政策について検討を進める。
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