土地を明示的に含む一般均衡モデルを構築してデータを用いた推計を行い、担保制約を通じた地価と設備投資の相互連関について評価を行った。このモデルでは、設備投資を行う企業セクターは担保制約に服していることが想定されており、担保資産の価格変動によって、企業の資金調達余力が変化することになる。さらに、家計・企業の土地需要や担保に対するヘアカット率が確率的に変動することによって、企業の借入可能額の変化を通じた経済への波及が生じることになる。 推計では、景気循環の主要な要因とされる技術進歩ショックと土地に対する需要ショックのどちらが重要であるか、定量的な評価を行っている。推計結果によると、中立的な技術進歩率がもっとも重要な要因であること、さらに土地に対する需要ショックは、それに次ぐ、景気循環上で重要な要因であることが示された。 これに加えて、バブル期前後や2007年から2008年ごろを含む金融危機前後における、土地需要ショックの役割について、推計されたモデルを利用したヒストリカル・シミュレーションにて検討を行った。それによれば、バブル期前後における設備投資変動の多くは、土地に対する需要ショックが大きな役割を果たしていたこと、2007年から2008年ごろの金融危機では土地需要ショックの役割は相対的には大きくないものの一定の役割を果たしていたこと、その背後ではヘアカット率が下支え方向に寄与していることが明らかとなった。これは、金融機関による貸し支え行動を捉えているものと解釈することができる。 分析結果については、19th Yonsei-Hokudai WorkshopおよびAsian meeting of Econometric Societyにて報告を行った。
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