入射波動場を再構成する第一段階として、既知試料からのシングルショットコヒーレント回折パターン測定を、日本のX線自由電子レーザー施設であるSACLAにて行った。具体的には、北海道大学のオープンファシリティ施設で利用可能な電子線リソグラフィ装置を用いて、厚さ200 nmの窒化ケイ素薄膜上に、直径200 nm、高さ30 nmの円柱型Auナノ構造体を作製した。また、北海道大学電子科学研究所技術部の協力を得て、X線レーザーの進行方向に対して試料を垂直に配置する「直入射測定」と、試料をその状態から最大70度まで回転させる「斜入射測定」のための試料ホルダをそれぞれ設計・作製した。SACLAにおける実験では、Kirkpatrick-Baez配置した全反射ミラーによっておよそスポットサイズ1. 5 umに集光したX線レーザーをAuナノ構造体に入射させ、そのおよそ1.5 m下流に配置したマルチポートCCD検出器によってシングルショットコヒーレント回折パターンを計測した。試料をX線レーザーの進行方向に対して70度傾けた場合であっても、試料セルのシリコン基板とX線レーザーが干渉せず、優れた信号対雑音比で試料由来の回折強度信号を取得できることが確かめられた。SACLAのハイパフォーマンスコンピュータを利用し、取得したシングルショットコヒーレント回折パターンに位相回復反復計算を適用した結果、電子顕微鏡による観察像とほぼ一致する再構成試料像が得られた。研究代表者は、2017年1月に兵庫県神戸市で開催された日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウムにおいて、本研究結果を発表した。
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