研究課題/領域番号 |
16H06591
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
石垣 侑祐 北海道大学, 理学研究院, 助教 (60776475)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 構造有機化学 / 長い結合 / dyrex系 / X線結晶構造解析 / DFT計算 |
研究実績の概要 |
これまでに当研究グループでは、電気や化学的な刺激によりC-C結合の形成/切断を生じる動的酸化還元系(dyrex系)について研究を進めてきた。そのような背景のもと、ジスピロアクリダン置換ピラセン(DSAP)が93 Kにおいて1.771(3)Å、413 Kでは1.791(3)Åという極度に長いC-C単結合を有することを見出した。C-C単結合の「伸長性/可逆的切断性」はサーモクロミズム挙動として観測されたが、その詳細なメカニズムは明らかとなっていない。 本研究課題は、このメカニズムを明らかにすることに加えて、極度に長いC-C単結合を有する化合物においてその共有結合を機械的な刺激により伸長/切断し、引張応力に応じた色調の変化を目指すものである。前者を明らかにするには、DSAPと同程度かそれ以上に伸長された単結合を有する誘導体の構築が必要であり、後者の実現には長い結合を有するテトラアリールピラセンを基本骨格として、アリール基上に重合性官能基の導入が求められる。 そこで本研究では、これまでの知見とDFT計算を基にジベンゾシクロヘプタトリエンがスピロ縮環した誘導体を合成し、得られた単結晶のX線結晶構造解析を詳しく行った。その結果、DSAPに匹敵する結合長が観測され、続くメカニズムの解明が期待される。一方、機械的刺激に応じた色調の変化、すなわち『分子変換に基づくメカノクロミズム系の実現』に向けて、重合性官能基としてビニル基をアリール基上に導入したピラセン誘導体の合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
C-C単結合の伸長に寄与する要因を新たに見出し、新規誘導体の合成に成功した。また、反応活性な重合性官能基を有するジアリールケトンを出発物質とし、目的とするピラセン誘導体への変換を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の遂行に向け、以下のStepに分けて研究を展開する。 【Step 1】アリール基がスピロ縮環したもの、あるいは重合性官能基としてビニル基以外の置換基を有するモノマーの合成 【Step 2】Step 1で合成したモノマー分子に対してDFT計算による理論値と実測値の検証 【Step 3】ポリマー化の検討 【Step 4】ポリマーにおける応答挙動の調査 これらのStepを基本的な研究サイクルとして繰り返し、メカニズムの解明とメカノクロミズム応答の実現に向けて推進する。
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