研究課題
これまでに、ヘキサフェニルエタン型化合物やアルカンダイマーにおいて1.7Åを超えるC-C単結合がいくつか報告されている。中でも、当研究グループによって先に見出されたジスピロアクリダン置換ピラセン(DSAP)は、413 Kにおいて1.791(3)Åという極度に長い結合長を有することが明らかとなっている。本研究課題は、そのような極度に長いC-C単結合を有する化合物を用いて機械刺激応答系の構築を目指したものである。極度に伸長した結合は比較的弱い外部刺激によっても伸縮すると考えられ、そのミクロな挙動をマクロな物性変化として取り出す狙いである。ここで、長い結合(コア)はその不安定性のため、分解反応が生じる可能性もあるが、本研究において新たに用いた『分子内コア-シェル構造』に基づく分子設計戦略は、剛直なシェルによってコアが保護されており、化合物自体の安定性を飛躍的に向上させることを見出した。これにより、ジスピロジベンゾシクロヘプタトリエンを二つ有するジヒドロピラシレン誘導体が、400 Kにおいて1.806(2)ÅというC-C単結合長を持つことが明らかとなり、結合長の世界記録を更新した。また、X線結晶構造解析によって結合電子の存在が確認されたことに加えて、ラマン分光法によってもC-C伸縮振動が観測されたことから、1.8Åを超える結合の存在を実験的に証明した。一方、現在までの研究において最短の炭素間接触は1.80(2)Åと報告されており、本研究で見出した共有結合と非結合の境界に位置する1.8Å以上の結合領域を『超結合』と呼ぶことを新たに提唱した。以上の研究成果によって、高次応答系実現に向けて『超結合』の持つ可能性が明らかとなり、『分子内コア-シェル構造』に基づく分子設計の有用性が示された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
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