研究課題
申請者は平成28年度において、授乳期マウスに低Ca餌を与えることによって低Ca血症状態を誘導することで、骨細胞周囲の骨基質が融解する、骨細胞性骨溶解の検索を進めてきた。授乳期マウスにBP製剤であるアレンドロネート(ALN)を投与することで、破骨細胞の活性を抑制し、破骨細胞の影響を排除した環境下で骨細胞が周囲の事基質を溶解するか、実験を行った。すると、授乳期マウスでは、ALN投与の有無に関わらず、1)骨芽細胞の活性は保たれ、骨梁において骨芽細胞の活性を抑制するsclerostinの発現が低下すること、2)Ca欠乏食を給餌すると、継時的に血中Ca濃度が低下していることがわかった。加えてvon Kossa染色による准超薄切片観察すると骨細胞周囲に青く抜けた未石灰化基質が露出し、そのような骨細胞を透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察すると、骨小腔の外形は凹凸を示し、骨小腔内部には分解されたコラーゲン線維のような構造物が認められた。また骨小腔周囲の骨基質の弾性率を、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定すると低下していることが明らかとなった。以上より、骨細胞が周囲の骨基質を溶解している可能性が強く示唆された。さらに、骨細胞は周囲の骨基質溶解だけでなく、溶解後は骨基質の添加を行う可能性を検索するため、カルセイン標識による蛍光顕微鏡観察、Ca安定同位元素による同位体顕微鏡観察を行った。すると、骨小腔と骨細管に一致してカルセイン標識が認められ、また骨小腔周囲の未石灰化領域に一致してCa安定同位元素が沈着していたことから、骨細胞は周囲の骨基質に石灰化沈着を誘導する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
申請者は野生型および授乳期マウスを用いて実験を行っているため、使用動物の供給が安定している。また使用薬剤であるPTH・ALNは数社の製品の中から確実に効果のあるものをに選んでいるため、動物実験での失敗が少なく、また、試料作りに煩雑な工程と技術が必要な透過型原子顕微鏡観察は日常的に行っている観察手法であるため研究成果を安定してあげることができている。
1)プロトンポンプの局在およびpH感受性プローブ解析骨細胞で産生された酸は細胞膜上にあるプロトンポンプを介して細胞外へ分泌される。従って、透過型電子顕微鏡(TEM)の免疫電顕(金コロイド法によるpost-embedding法・可能であれば、微細な金コロイドを用いたpre-embedding法)を用いて、破骨細胞特異的なプロトンポンプsubunit/a3、および、腎臓からも検出されるプロトンポンプsubunit/d2を検出する。さらに、実際に酸性環境になっているか明らかにする必要があげられる(pH4.7-6.8程度の酸性環境でハイドロキシアパタイトの溶解が起こる)。そこで、pHの低下により蛍光を発するスイッチ機能を導入したpH感受性プローブを用いて解析を進める。2)骨融解後の石灰化沈着の解析Caが沈着する足場となるコラーゲン線維について検索を行う。まずは透過型電子顕微鏡(TEM)にて再石灰化部位を観察するほか、原子間力顕微鏡(AFM)によるナノインデンテーションを行うことで、骨小腔周囲の骨添加された骨基質の物性を検索する。
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