研究課題
【細胞外小胞miRNAによる腫瘍血管の異常性獲得メカニズム解明と診断・治療への応用】近年我々は,腫瘍血管内皮細胞が血管新生能の亢進や幹細胞性・薬剤耐性などの異常性をもつことを報告してきた.さらに,これらの性質の獲得には,がん細胞由来の細胞外小胞(Extracellular vesicles: EVs)が関与していることを発見した.EVsにはmiRNAが含まれていることが知られているが,我々は悪性度の異なるがんではその中のmiRNA発現量が異なることを見出している.平成28年度は,悪性度の異なる細胞株である高転移性ヒト悪性黒色腫細胞株A375SM (super metastatic clone)および低転移性ヒト悪性黒色腫細胞株A375 (parental clone)の培養上清から超遠心法(110,000g)により単離したEVsにおけるmiRNA発現量をmiRNA arrayにより解析した結果から,候補として上がっているmiRNAに関して,miRNA PCRにより比較検討した.その中の一つであるmiRNA-Xを正常血管内皮細胞に遺伝子導入し,その影響を検討したところ,5-FUに対して薬剤耐性を獲得することを発見した.このことは,今後,腫瘍血管内皮の異常性獲得メカニズムを解明し,新たながんの診断・治療への応用を目指す上で非常に重要な成果である.またmiRNA-Xの標的遺伝子候補をmiR DB,TargetScan, Dianaなどの複数のデータベースから現在検索中である.
3: やや遅れている
当初の計画通り,悪性度の異なるがん細胞株の培養上清から単離した細胞外小胞に含まれるmiRNA-Xを正常血管内皮細胞に導入すると,薬剤耐性を獲得することがわかった。しかし,miRNA-Xの標的遺伝子候補は複数抽出されており,実際に薬剤耐性獲得に寄与している遺伝子をまだ特定できておらず,3’UTR assayによりmiRNAが標的mRNAに結合することを証明するに至らなかった。
今後は,同定されたmiRNA-Xの標的遺伝子を特定し,その発現を分離・培養した腫瘍血管内皮細胞間で比較する.がん細胞由来細胞外小胞に含まれるmiRNAが,腫瘍血管内皮細胞の特異性に関与しているのであれば,腫瘍血管内皮細胞においてその標的遺伝子の発現が制御されているはずである.悪性度の高いがん由来の血管内皮細胞は,悪性度の低いがん由来血管内皮細胞よりも高い異常性を示すため,それらの違いが細胞外小胞miRNAに起因するかどうか,PCR法により標的遺伝子の発現を比較する.また細胞外小胞が血管内皮に与える影響について,単離した細胞外小胞を血管内皮細胞に処理してin vitroで評価する.あらかじめ細胞外小胞をPKH26dyeにより赤色蛍光標識し,血管内皮細胞に処理後,フローサイトメトリーによりその取り込みを評価する.細胞外小胞を介してmiRNAが血管内皮に作用したかどうか,細胞外小胞処理後の血管内皮からmiRNAを抽出し,これまでに絞り込んできたmiRNAの発現を比較する.さらに,RNAを抽出して標的遺伝子の発現をRT-PCR法により解析する.さらに臨床検体を用いてmiRNAの発現量とその臨床病理学的因子,予後との関連を比較する.
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)
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