研究課題
われわれはこれまで,腫瘍血管内皮細胞の異常性を明らかにしてきており,その性質の獲得にはがん細胞由来細胞外小胞(Extracellular vesicles: EVs)が関与していることを見出してきた.EVsにはmiRNAが含まれていることが知られていることから,本研究では悪性度の高いがん由来EVsに含まれるmiRNAに着目し,それらが腫瘍血管内皮細胞の薬剤耐性獲得に関与するかどうか検討した.平成28年度は,悪性度の高いがん由来EVsにはmiRNA-Xが多く含まれ,それを正常血管内皮細胞に遺伝子導入すると,5-FUに対する薬剤耐性が誘導されることを見出した.平成29年度はmiRNA-Xの標的遺伝子を絞り込んだ.TaregetScan,miRDBなど複数のデータベースから標的遺伝子候補を抽出し,3’UTR assayによりmiRNA-Xが候補遺伝子に結合するかどうか,さらにその標的遺伝子候補をsiRNAでノックダウンした際に,5-FUに対する薬剤耐性がキャンセルされるかどうか検討した.その結果,標的遺伝子Yが選出された.単離したがん由来EVsをPKH26dyeで標識し,正常血管内皮細胞に処理すると,赤色蛍光を発する細胞がフローサイトメトリーにより検出され,EVsが血管内皮細胞に取り込まれていることが確認された.EVsを血管内皮細胞に処理すると,miRNA-Xの発現が亢進し,さらに標的遺伝子Yの発現が低下した.がん患者の血清からEVsを超遠心法で回収し,miRNA量を検討すると,健常人よりもmiRNA-Xの発現が高かった.以上より,がん細胞が分泌したEVsにはmiRNA-Xが多く含まれ,それを取り込んだ血管内皮細胞は標的遺伝子Yの発現が低下することにより,5-FUに対して薬剤耐性を示すことが明らかになった.
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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