摂食行動は神経系により高度に制御されており、脳、特に視床下部や脳幹が個体全体のエネルギー状態、個々の組織の代謝状態を感知し、それらの情報を統合することが知られる。最近レプチン受容体が視床下部アストロサイトにも発現していることが明らかにされており、ニューロンだけでなくグリアも肥満研究の関心の中心になりつつあるが、その機能に関して不明な点が多い。そこで本研究の目的は、グリアの一つであるオリゴデンドロサイト前駆細胞(Oligodendrocyte Progenitor Cells: OPCs)が視床下部の血中栄養素のセンシングにおいて果たす役割を明らかにすることである。具体的に、視床下部OPCsの活性変化が、神経可塑性や摂食行動に変化をもたらすかどうかについて、ジフテリア毒素によるOPCs特異的除去マウスにより、OPCsの活性状態を変化させるモデルを作製した。PDGFRα蛍光標識マウスを作製し、PDGFRα陽性細胞をセルソーターで分離できるようにした。OPCsと血管内皮細胞、OPCsと他のグリア細胞(アストロサイト、タニサイト)がどのような機構で連携しているのかを組織学的に明らかにするために、免疫組織学染色、SBF-SEM(Serial Block Face-Scanning Electron Microscopy)などによる形態学的手法による観察を行った。さらにマウス初代培養OPCを樹立し、走査型電子顕微鏡(SEM)や、ライブセルイメージングを行える技術を確立した。PDGFRa-EYFPマウスからPDGFRa陽性細胞つまりOPCを特異的に分離し、発現する代謝関連受容体、ホルモン受容体などの違いをDNAマイクロアレイ、q-PCRなどの解析によって同定することにより、肥満病態へのOPCの関与を明らかにする予定である。
|