研究実績の概要 |
平成29年度は平成28年度に開発したZnO 薄膜多チャンネル高周波数超音波プローブを用いて光音響スペクトロスコピー計測を行った。それに加えて、円環に素子が配置されたアニュラアレイプローブおよびシングルエレメントの超音波プローブも用いて比較実験を行った。 (1) 受信ビームフォーミングに関して 当初計画していた自己相関法を用いた受信ビームフォーミング(S. W. Flax, et al. "IEEE Trans. Ultrason. Ferroelectr. Freq. Control 1988 35(6) 758-767) をさらに発展させ、Wiener filterおよび光音響波の特性を生かしたビームフォーミング手法を確立させた。本手法によって、適用しない場合の空間分解能と比較するとおよそ3倍程度の改善が確認できた。さらに、発生する光音響波がその音源の形状に依存した初期位相を有する特徴に着目し、その点を補正することでさらに空間分解能を向上させることが可能であることも確認した。 (2) 光音響スペクトロスコピーを用いた基礎実験に関して 平成28年度と同様に400-1200 nmの波長領域を用いて、開発したビームフォーミング手法と光音響スペクトロスコピー計測のアルゴリズムを組み合わせた計測を行った。計測対象は基礎実験として、蛍光微小粒子と染色した培養細胞を用いて、光音響強度の波長依存性の計測を行った。計測した光音響強度の波長依存性は計測対象の光学的な吸収係数と非常によく一致を示した。さらに、培養細胞をマウスに移植し、体表から開発したイメージング手法を用いて可視化することが可能であり、開発した手法の有用性を示した。
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