ヒトは社会(集団・群れ)を形成し他者と相互作用しながら生きている。このような環境では「他者とうまくやる、つまり、適切な社会的意思決定を行う」ことが生存に不可欠である。本研究では、脳イメージング実験と計算論的アプローチを組み合わせることで、「ヒトの社会的意思決定の計算論的・神経科学的基盤の解明」を目指す。特に、従来の研究で注目されてこなかった"他者との利害関係"の推定」に焦点を当てる. 平成28年10月の研究開始からの半年間で、機能的脳イメージング実験のデザイン策定及び実験に必要な環境の整備(実験刺激呈示用の計算機購入、データ解析用のソフトウェア購入など)を行い、予備心理実験を行った。 予備心理実験は19名の大学生・大学院生を対象に、「実験が被験者にとって難しすぎるということはないか?」、「被験者が我々の意図した通りの行動をするのか?」などをチェックし、脳イメージング実験のデザインを改訂することを目的に実施した。実験データを解析した結果、被験者が実験を概ね我々の意図通りに遂行できることが確かめられた。つまり、「被験者は"他人の行動パターン"と"他者との利害関係"を考慮したうえで意思決定を行うことができる」ことが確認できた。また、さらにこれらの結果を踏まえ、「被験者の意思決定パターンを再現できる数理・計算論モデルの構築」や「脳イメージング実験に向けた実験デザイン・データ解析方法の詳細の検討」などを試みた。
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