本年度は、引き続き戦後日本の社会変動とマイノリティ教育に関連する諸研究のレビューや研究交流を行った。特に、一橋大学の木村元研究室との研究交流においては、戦後日本の社会変動を「学校化社会」の形成過程として捉え、その境界に関わる事例として夜間中学を位置づける視座を得ることができた。また、東京大学の小国喜弘研究室との研究交流を通して、1970年代の障害児教育を始めとするマイノリティ教育の状況について知見を深めることができた。さらに、新たに神戸学院大学の水本浩典研究室との研究交流が始まり、兵庫県神戸市の夜間中学及び周辺の被差別部落に関する知見を深めることができた。 成果報告やアウトリーチ活動に関しては、まず、日本教育学会、教育史学会、基礎教育保障学会において戦後の夜間中学に関する学会報告を行い、貴重な助言を得ることができた。次に、アウトリーチ活動としては、宮城県仙台市で活動する仙台自主夜間中学のスタッフ研修会において、公立夜間中学の歴史に関して講演を行って知見を提供すると共に、自主夜間中学の現状や課題について新たな知見を得ることができた。 今回研究を進める中で、1970年代以降の夜間中学に関しては、韓国や中国からの引揚帰国者、在日朝鮮人、障害者、難民・移民等の様々なマイノリティの夜間中学への就学動向、教師達の教育実践や言説の変化、全国夜間中学校研究会での議論、自主夜間中学設置の動向等、様々な要因が複雑に絡まっており、全国的動向の把握と個別の事例研究を丁寧に進める必要があることが浮かび上がってきた。今後は、ひとまず対象時期を1970~80年代に絞り、史料収集・保存、聞き取り調査、実践記録の検討等を着実に進めていく予定である。
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