H29年度においてはCo-V-Ga3元系合金を対象に、マルテンサイト変態に伴うエントロピー変化、磁気特性の変化および平衡状態図の決定を行った。 1. H28年度において作製したCo50V(50-x)Gax断面の合金を用いて、熱分析によりエントロピー変化の系統的評価に行った。同断面では、母相キュリー温度以下において、マルテンサイト変態が突然起きなくなる現象がH28年度の研究結果において判明した。今年度は熱分析を行った結果、マルテンサイト変態温度の低下に伴い、エントロピー変化が徐々に低下し、母相のキュリー温度以下では急激に低下することが分かった。このことから、マルテンサイト変態が起きなくなることは熱変態駆動力の低下による現象であることが判明した。 2. Co50V(50-x)Gax断面においてさらに細かく組成を刻み、マルテンサイト変態挙動を調査したところ、強磁性母相から常磁性マルテンサイト相への相変態を示す試料が見つかった。この試料を用いて、東大物性研国際超強磁場科学研究施設にてパルス強磁場磁化測定を行ったところ、母相が誘起されるメタ磁性相転移を観測することができ、Co系ホイスラー合金においては初めての報告例となった。 3. Co-V-Ga3元系合金において、種々の合金を用意し、1200℃と1000℃2つの等温断面平衡状態図を実験的に決定した。両断面ともCo-GaからのB2/ホイスラー相、純Coからのfcc相、V3CoからのA15相および純Vからのbcc相等の単相領域が存在することが分かった。また、この状態図を用いて、マルテンサイト変態を示す組成の全容が分かり、マルテンサイト変態温度が200~500Kの幅広い温度範囲において出現することが分かった。 1と2の実験結果については国際会議において一般講演および招待講演で発表した。また、これらの結果を論文に纏め、これから投稿する予定である。
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