研究課題/領域番号 |
16H06635
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
家村 顕自 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (50778058)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 分裂期 / 染色体動態 / リン酸化 / 動原体 / がん |
研究実績の概要 |
紡錘体赤道面での動原体-微小管結合修正におけるAurora Aの寄与を検証するため、Aurora A 阻害正常二倍体細胞における動原体-微小管結合を高解像度蛍光顕微鏡観察によって確認した。その結果、Aurora A阻害細胞では誤った動原体微小管結合が増加していることが分かった。更に、Aurora A 阻害正常二倍体細胞における分裂期中期染色体の動態解析を行うために動原体と紡錘体極を可視化し、分裂期中期で同調した正常二倍体細胞にAurora A 阻害剤を処理した後、分裂期中期における染色体動態を生細胞観察するとともに、分裂期後期に細胞周期を進行させ、染色体分配過程を生細胞観察したところ、Aurora A阻害細胞では分裂期中期染色体動態が減弱しており、染色体不均等分配が高頻度で引き起こされることが分かった。また、CRISPR/Cas9システムとAID法を用いて時期特異的Aurora A及びAurora B欠損細胞を作製し、分裂期中期でAurora A及びAurora Bを欠損させた結果、Aurora A欠損細胞では分裂期染色体動態と動原体分子のリン酸化が減弱していたが、Aurora B欠損細胞では変化がみられなかった。 加えて、Aurora Aの分裂期中期での役割りにおける細胞株間の比較解析を行うために、分裂期中期に同調した正常細胞株と様々ながん細胞株について、動原体分子のリン酸化度合いを検証したところ、正常細胞株に比してがん細胞株では動原体分子のリン酸化が減弱していた。また、がん細胞株内においても染色体不安定性をもつがん細胞株ではリン酸化の減弱が特に亢進していた。 以上の結果から、紡錘体赤道面での動原体-微小管修正にAurora Aが寄与しており、その寄与度は聖染色体不安定性の有無によって変動することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Aurora Aが分裂期中期における紡錘体赤道面上での動原体-微小管結合修正に寄与している可能性を強く示唆する結果を得ているとともに、当該研究課題のターゲット分子を時期特異的に欠損できる細胞株を取得している。また、紡錘体赤道面での動原体のリン酸化ががん細胞株で減弱しているのみならず、がん細胞株のなかにおいても染色体不安定性をもつがん細胞ほどその減弱度合いが亢進していることを明らかにしており、当初の予定どおり研究がおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
Aurora Aが寄与する堅牢な染色体均等分配システムの分子基盤を解析するために、様々な細胞株におけるAurora A及び触媒分子であるTPX2の発現レベルを確認し、両者の結合状態について細胞株間で変化がないか比較解析する。また、細胞株の動原体と紡錘体極を可視化し分裂期中期染色体動態と動原体-微小管結合修正に異常がみられるかどうかを確認する。更に、Aurora A を過剰発現もしくはドミナントネガティブ変異体による部分抑制を行い、染色体不安定性細胞の発生頻度が回復もしくは亢進するかどうかを明らかにする。 加えて、分裂期中期動原体でのAurora A の新規基質の同定とAurora A によるリン酸化部位の同定するために、時期特異的Aurora A欠損細胞を用いて、Aurora A 欠損前後の分裂期中期同調細胞抽出液についてLC-MS/MS解析を行う。新たな基質候補分子及びリン酸化部位を同定できた場合は、in vitro kinase assay で確認するとともに、リン酸化抗体を作成し細胞内における挙動を観察する。また、同定した基質分子やリン酸化部位のリン酸化模倣変体を時期特異的Aurora A欠損細胞に導入し、分裂期中期特異的にAurora A を欠損させた際の表現型が回復するかどうかを確認する。
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