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2016 年度 実績報告書

Bach2遺伝子欠損マウスを用いた続発性肺胞蛋白症発症機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16H06640
研究機関東北大学

研究代表者

渋谷 里紗  東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (90778408)

研究期間 (年度) 2016-08-26 – 2018-03-31
キーワード肺胞蛋白症 / 慢性炎症 / Bach2 / Bach1
研究実績の概要

1)肺胞マクロファージにおけるBach2の機能の解明:1-1)マイクロアレイ解析の結果、Bach2遺伝子欠損マウスの肺胞マクロファージでは、肺胞マクロファージ特異的な遺伝子発現パターンを失う一方で、脾臓赤脾髄マクロファージなどに特異的な遺伝子発現パターンを示していた。1-2)ミエロイド系細胞を用いたChIP-seqにおいて、Bach2は多くの炎症関連遺伝子や、脾臓赤脾髄マクロファージ特異的な遺伝子に結合し、その発現を抑制していた。
2) Bach1/Bach2二重欠損マウスの解析:Bach1は様々な細胞や組織で発現する転写抑制因子である。Bach1 遺伝子欠損マウスは肺胞蛋白症を発症しないが、Bach1/Bach2二重欠損マウスは、Bach2遺伝子欠損マウスと比較してより早期から重篤な肺胞蛋白症を発症することを発見し、肺恒常性におけるこれら2つの転写因子の相補的機能を報告した(J Biochem. 2016)。
3) 遺伝子改変マウスの表現型解析:3-1)Bach2/Rag2二重欠損マウス、B細胞・T細胞特異的Bach2遺伝子欠損マウスは、いずれも肺胞蛋白症を発症しなかった。3-2)T細胞特異的Bach2遺伝子欠損マウスの肺胞マクロファージにおいて、Bach2の発現が亢進していた。ChIP-seqの結果と合わせ、肺胞マクロファージにおいて、Bach2は、炎症反応に応答した機能喪失を抑えていることが明らかとなった。
4) 肺胞蛋白症における細胞間相互作用の解明:Bach2遺伝子欠損マウスの肺胞洗浄液中に、リンパ球の浸潤を認めた。T細胞においてBach2はIfngなどの炎症性サイトカインの遺伝子発現を抑制している。従ってBach2遺伝子欠損マウスの肺環境において、Bach2欠損T細胞で分泌されたこれらサイトカインが肺胞マクロファージの性質を変えている可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

計画段階では肺胞マクロファージを用いてChIP-seqを行う予定であったが、収集した肺胞マクロファージにおいて十分な量のBach2の蛋白質が確認できなかったため、代替としてミエロイド細胞株であるM1細胞を使用し、Bach2抗体によるChIP-seqを行うことに成功した。しかし、予算や時間の都合上、ヒストン修飾は調べないこととした。遺伝子改変マウスの作成や解析については順調に進行した。マウスの肺胞洗浄液を用いたサイトカインアレイを試みたが、濃度が薄いためか、当該サイトカインは検出できなかった。濃縮法を用いても検出できなかったため、サイトカインアレイは行わず、今後、T細胞特異的Bach2遺伝子欠損マウスのT細胞を用いた定量PCRで、いくつかの候補サイトカインの発現を調べる予定である。
総合的な進捗状況として、一部、行えなかった実験はあるものの、代替手段をとることで解決可能と考えられ、概ね順調と思われる。また、T細胞特異的Bach2遺伝子欠損マウスの肺胞マクロファージにおいてBach2の発現が亢進していること、Bach1/Bach2二重欠損マウスにおける肺胞蛋白症の重篤化は予定外の発見であり、今後の研究の新たな方向付けとなった点で、今後の発展が期待される。

今後の研究の推進方策

1)続発性肺胞蛋白症の新規治療法の開発:1-1)Bach2遺伝子欠損マウスの解析や、T細胞特異的Bach2遺伝子欠損マウスのT細胞を用いた定量PCRから、肺胞蛋白症の原因となり得るサイトカインを同定し、そのサイトカインのシグナルを抑制することで肺胞蛋白症が改善するかを調べる。1-2)続発性肺胞蛋白症患者もしくは非肺胞蛋白症患者から、肺胞洗浄液と末梢血を採取する。検体中に含まれる細胞の分画を、フローサイトメトリー解析により調べる。また、検体中に含まれる炎症性サイトカインをサイトカインアレイにより網羅的に調べ、肺や全身における炎症状態を評価する。以上の結果を、肺胞蛋白症患者と非肺胞蛋白症患者の間で比較し、肺胞蛋白症と炎症反応に関連があるかを検証する。続発性肺胞蛋白症と炎症反応に関連があり、Bach2遺伝子欠損マウスにおける肺胞蛋白症改善に効果がある薬剤が同定できた場合、その薬剤の臨床応用を検討する。
2)ヒト続発性肺胞蛋白症におけるBach2の機能の解明:続発性肺胞蛋白症患者もしくは非肺胞蛋白症患者の肺胞洗浄液中の細胞や末梢血を用い、免疫染色・PCRでBach2遺伝子と関連遺伝子の発現を調べ、群間比較する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] The double knockout of Bach1 and Bach2 in mice reveals shared compensatory mechanisms in regulating alveolar macrophage function and lung surfactant homeostasis.2016

    • 著者名/発表者名
      Ebina-Shibuya Risa, Watanabe-Matsui Miki, Matsumoto Mitsuyo, Itoh-Nakadai Ari, Funayama Ryo, Nakayama Keiko, Muto Akihiko, Igarashi Kazuhiko
    • 雑誌名

      Journal of Biochemistry.

      巻: Dec;160(6) ページ: 333-344

    • DOI

      10.1093/jb/mvw041

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Bach2 keeps homeostasis in lung by maintaining the function of alveolar macrophages in inflammatory environment2017

    • 著者名/発表者名
      Risa Ebina-Shibuya, Mitsuyo Matsumoto, Makoto Kuwahara, Kyoung-Jin Jang, Manabu Sugai, Yoshiaki Ito, Ryo Funayama, Keiko Nakayama, Yuki Sato, Naoto Ishii, Yasunobu Okamura, Kengo Kinoshita, Kohei Kometani, Tomohiro Kurosaki, Akihiko Muto, Masakazu Ichinose, Masakatsu Yamashita, Kazuhiko Igarashi
    • 学会等名
      The 2017 Japan-NIH joint Symposium
    • 発表場所
      東北大学星陵キャンパス 星陵オーディトリアム (仙台)
    • 年月日
      2017-02-15 – 2017-02-17
    • 国際学会
  • [学会発表] Bach2 maintains homeostasis in the lung by modulationg the inflammatory interaction between macrophages and T cells2017

    • 著者名/発表者名
      Risa Ebina-Shibuya, Mitsuyo Matsumoto, Yuki Sato, Keiko Nakayama, Naoto Ishii, Kengo Kinoshita, Tomohiro Kurosaki, Akihiko Muto, Masakazu Ichinose, MasakatsuYamashita, Kazuhiko Igarashi
    • 学会等名
      The 19th Takeda Science Foundation Symposium on Bioscience
    • 発表場所
      武田薬品研修所 (大阪)
    • 年月日
      2017-01-20 – 2017-01-21
    • 国際学会

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公開日: 2018-01-16  

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