1) 肺胞マクロファージ (AM) におけるBach2の機能の解明:1-1)マイクロアレイを行ったところ、Bach2遺伝子欠損マウスのAMは、AM特異的な遺伝子発現パターンを失う一方で、脾臓赤脾髄マクロファージや腹腔マクロファージに特異的な遺伝子発現パターンを示していた。1-2) Chromatin immunoprecipitation sequence (ChIP-seq) を行ったところ、Bach2は多くの炎症関連遺伝子や、脾臓赤脾髄マクロファージ特異的な遺伝子に結合し、その発現を抑制していた。 2) 肺胞蛋白症における細胞間相互作用の解明:Bach2/Rag2二重欠損マウス、B細胞あるいはT細胞特異的Bach2遺伝子欠損マウスのいずれでも肺胞蛋白症を発症しなかった。しかし、T細胞特異的Bach2遺伝子欠損マウスの肺ではBach2遺伝子欠損マウスと同様の炎症細胞の浸潤を認め、AMにおけるBach2 の発現は上昇していた。野生型のAMをIFNγで刺激すると、Bach2の発現が誘導された。以上から、AMにおいて、Bach2は、炎症反応に応答した機能喪失を抑えていると考えられた。 3) Bach1/Bach2二重欠損マウスの解析:Bach1 遺伝子欠損マウスは肺胞蛋白症を発症しないにも関わらず、Bach1/Bach2二重欠損マウスは、Bach2遺伝子欠損マウスより早期から重篤な肺胞蛋白症を発症することを発見し、これら2つの転写因子が互いに相補的機能を持って肺の恒常性を維持していることを報告した (J Biochem. 2016 Dec)。 4) 肺胞蛋白症の新規治療法の発見:Bach2遺伝子欠損マウスにおいて、抗体を用いてCD4陽性T細胞を枯渇させたところ、肺胞蛋白症が治癒することを見出した (J Biol Chem. 2017 Nov) 。
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