研究課題/領域番号 |
16H06643
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大川 博子 東北大学, 大学病院, 医員 (00781296)
|
研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
|
キーワード | 歯学 / 組織工学 / 再生歯学 / 骨 |
研究実績の概要 |
広範囲の顎骨欠損を生じた症例において補綴装置による十分な機能回復を得るためには,補綴装置を支える顎堤,骨組織を再生する技術の開発が重要な課題となる。これまでに,マウスiPS細胞から作製した骨様の構造体が『生体内で骨形成を促進する』という知見を得ている。しかしながら,動物種が大きく異なるため,ヒトiPS細胞に応用するには,骨芽細胞分化誘導条件をさらに検討し,より生体に近い環境下で培養を行う必要がある。 本研究課題の目的は,低酸素培養下でヒトiPS細胞の骨芽細胞分化を強力に促進する分化誘導方法を同定し,さらには広範囲の骨増生技術として臨床応用へ展開するための研究基盤を確立することである。 初年度の平成28年度では,まず低酸素環境がマウスiPS細胞の骨芽細胞分化に及ぼす影響を検討した.低酸素チャンバー内でマウスiPS細胞の骨芽細胞分化を行った結果,マウスiPS細胞の石灰化が促進した.さらに,低酸素模倣化合物を用いて分化誘導を行った結果,低酸素模倣化合物がマウスiPS細胞の石灰化を促進することも明らかとなった。 本年度では,低酸素培養は,マウスiPS細胞の石灰化を促すという知見を得ることができ,本研究課題を達成するために有用な知見を得ることができた。 今後は,ヒトiPS細胞を用いて低酸素環境のもとで骨芽細胞分化誘導を行っていく予定である。これらの結果は,ヒトiPS細胞を用いた新規骨再生材料となる可能性を示しており,今後の研究の発展が期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は低酸素培養下でヒトiPS細胞の骨芽細胞分化を強力に促進する分化誘導方法を応用した,広範囲な骨欠損に対する新規歯槽骨再生技術の開発を目的としており、初年度では低酸素培養がiPS細胞の骨芽細胞分化に及ぼす影響の検討を計画していた。研究実績の概要の通り,低酸素環境が,マウスiPS細胞の石灰化を促進したことを明らかにした。 以上のことから本研究の進捗は、おおむね順調に進展していると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、ヒトiPS細胞を低酸素環境下において骨芽細胞分化誘導を行い,iPS細胞の石灰化にとって最適な酸素濃度および分化誘導期間の検討を行う。さらに、ヒトiPS細胞由来三次元骨様組織が,骨組織再生に及ぼす影響を、動物実験を用いて検討を行う。
|