2017年度は,研究2と研究3を実施した。研究2(縦断研究)の詳細は以下の通りである。1. 対象者:大学進学予定の580名。2. 調査内容:未来結果の熟慮,大学生活への期待と現実,大学での学業成績など。3. 手続き:Time 1の調査を2017年3月に行い,Time 2の調査を1年後の2018年3月に行った。4. 分析結果:Time 1のデータでは,未来結果の熟慮は,大学生活への期待と中程度の相関が確認された。Time 2のデータを含めた分析では,大学入学前の未来結果の熟慮は,1年後の大学生活の適応を予測していた。特に,大学生活の学業適応の高さと正の関連があり,遠い未来を熟慮することは,充実した大学生活を促進することが明らかになった。 研究3(教育的介入)の詳細は以下の通りである。1. 対象者:高校1,2年生265名。2. 調査内容:3年後の自己連続性,希望,進路成熟度,希望進路先,学業満足遅延行動,手紙の主観的効果・記入内容など。3. 手続き:参加者は,3年後の自分に往信した後に現在の自分に返信を行う「返信あり条件」,往信のみを行う「返信なし条件」,何も課題を行わない「統制条件」の3条件にランダムに割り振られた。4. 分析結果:3年後の自己連続性,進路自律度の上昇度合いを指標とした分析では,「返信あり条件」でより得点が上昇したことが示された。手紙の主観的効果についても,自己の客観視の得点が返信あり条件で高かった。これらの結果から,3年後の自分から今の自分に手紙を送ることが進路意識の成熟に繋がることが明らかにされた。 以上の結果について,2017年9月にオランダで開催された18th European Conference on Developmental Psychologyにて発表を行った。また,アウトリーチ活動として,2018年3月に研究成果報告会を開催し,報告を行った。
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