研究課題
ロリクリン欠損(LKO)マウスではイミキモド誘発皮膚炎モデルにおいて、有意に皮膚炎が強くみられた。特に皮膚の腫脹と角化が強く見られた。耳介皮膚に機械的刺激を与え、炎症関連因子の遺伝子発現をリアルタイム定量PCRで解析した。LKOマウスでは、機械的刺激に応じて、野生型と比較して、インターロイキン1bやTNFα、インターフェロン1αの発現が有意に増加していた。さらに定常状態においては、ランゲルハンス細胞のマーカーであるランゲリンと、形質細胞様樹状細胞のマーカーであるBST2も野生型と比較して発現増強していた。BST2で定常状態の耳介皮膚を免疫染色すると、LKOマウスにおいて真皮内に樹状の形態の細胞がより多くみられた。さらに、マウスの表皮バリアが完成する胎生17.5日において、同様の変化が見られるかを、背部より採取した皮膚の遺伝子発現により検討した。しかし、ランゲリン、BST2ともに差はなかった。一方で、出生後24時間と96時間の背部皮膚で検討したところ、後者において、LKOマウスにおけるインターロイキン1bとインターフェロン1αの発現増強がより目立つようになっていた。マウスにおける樹状細胞のネットワークが、胎生7日程度で急速に完成することを考えると、ロリクリンの欠損は、出生後の自然免疫機構の発達そのものに影響を与えている可能性を示唆し、樹状細胞の増加はバリア不全に適応した出生後反応である可能性を示唆した。今回の結果からは、ロリクリンの欠損が、外来抗原に対する反応のみならず、骨髄細胞分化そのものにも影響している可能性が示唆された。
3: やや遅れている
LKOマウスにおける樹状細胞の増加は、当初予想していたものではなかったが、機械的刺激に応じたサイトカイン産生の増加や、高分子抗原に対する経皮感作の亢進や紫外線感受性の増加等を説明することのできる所見である。
表皮特異的にランゲルハンス細胞を欠くランゲリンDTAマウス、胸腺外分化/表皮在住リンパ球であるγδT細胞を欠くTCRDマウスをLKOマウスと交配することによって、機械的刺激に対する反応などから、角化細胞と骨髄系細胞との相互作用を生体内で明らかにしていく。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件)
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