ロリクリンの欠損が末梢免疫に与える影響を、主として皮膚炎モデルを用いて検討した。皮膚炎、アレルギーをきたしやすいBALB/c背景では、予想通りアトピー性皮膚炎モデルや尋常性乾癬モデルの炎症増悪が見られた。これは、人の1番染色体に存在し、ロリクリンを含め多くの角化関連の遺伝子座が存在するEpidermal Differentiation Complexに見られる一塩基多型と一致するものと考えられた。一方で、細胞性免疫反応を来たしやすいc57BL/6背景では皮膚炎は増悪せず、ハプテン誘発性の接触過敏症において、興味深いことに反応はむしろ抑制されていた。また、表皮ランゲルハンス細胞を欠くロリクリン欠損マウスでは、炎症反応の抑制が解除された。今回の検討が示唆するものとして、以下の二点を挙げた。一つ目として、ロリクリンの欠損が単なる表皮の構造的脆弱性から、自然免疫の活性化を来たしやすいこと。二つ目として、表皮においては角化細胞と骨髄系細胞との相互作用を介する内因性炎症制御機構が存在すること。特に二つ目の機構を検討することによって、表皮細胞間の相互作用の分子機序が明らかになる可能性がある。今回の検討で得られた知見を足がかりとして、最終的には皮膚を場とする末梢免疫制御機構の解明と、アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬、あるいは皮膚炎を始まりとするアレルギー疾患のの新規治療薬の創出に繋げることを目標とする。
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