研究課題/領域番号 |
16H06666
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
田中 裕之 宇都宮大学, 学内共同利用施設等, 研究員 (60782042)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 活性酸素 / ライヴイメージング / 環境応答 / 植物 |
研究実績の概要 |
環境ストレスによる植物の傷害の多くは活性酸素(ROS)を介した酸化損傷に起因する。また、ROSの生成と消去のバランスに依存した細胞内酸化還元(レドックス)状態の変化は、様々な生理機能の発現にも深く関わっている。しかし、これまで、植物細胞内におけるレドックス状態の変化は、生化学実験を中心に解析されており、1細胞内における時空間情報の知見は少ない。そこで本研究では、植物における細胞内レドックス変化の時間的・空間的挙動を明らかにすることを目的として、ROS 応答性蛍光プローブを用いた生細胞タイムラプスイメージングに取り組む。 平成28年度の実施計画は、植物細胞におけるROS応答性蛍光プローブの有効性の検討であった。これまでに、多種類のROS応答性蛍光プローブが開発されており、それぞれ励起波長・蛍光波長が異なっている。そこで、植物細胞でのROS検出に適した蛍光プローブを選別するために、ROS産生および葉緑体自家蛍光が抑制されやすい励起波長を検討した。様々な波長を検討した結果、545 nm付近の励起波長を使用することが植物細胞でのROS検出に最適であることがわかった。また、当初の実施計画では、平成29年度に行う予定であったが、特定のオルガネラでROS を消去する形質転換ゼニゴケの作製は今年度に前倒しで開始した。形質転換用プラスミドの作製は既に完了し、現在、アグロバクテイルム法によってゼニゴケへの導入を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共焦点レーザー顕微鏡のトラブルのため、植物細胞におけるROS応答性蛍光プローブの有効性の検討がやや遅れている。 しかし、当初、平成29年度に実施予定であった形質転換ゼニゴケの作出を前倒しして、平成28年度から開始した。 それを考慮すれば、概ね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度から作製している「特定のオルガネラでROS を消去する形質転換ゼニゴケ」と並行して、「特定のオルガネラに ROS 応答性蛍光タンパク質を発現した形質転換ゼニゴケ」を作製する。ROS 応答性蛍光タンパク質は平成28年度の成果に基づいて、Hyper-Redの使用を予定している。前述の形質転換ゼニゴケが作製でき次第、蛍光生体イメージング解析によって、各オルガネラにおけるROS 生成のタイミングや増加速度を解析する。
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