免疫チェックポイント阻害剤であるニボルマブはPD-1に対する抗体であり、PD-1とリガンドPD-L1の相互作用を阻害し免疫抑制を解除することで優れた抗腫瘍効果を発揮するが、奏効率は30%程度と低いため、薬効を予測可能なバイオマーカーや判別方法の開発が求め られている。また体内動態と薬効の関連についての検討は不十分であり、本研究ではPD-1抗体感受性と耐性モデルを見出し、それらのモデルを用いたPD-1抗体の体内動態の解析を目的として研究を進めた。 昨年度に引き続き、PD-1抗体への感受性を評価するため、マウス担癌モデルを追加し、計18モデルの腫瘍組織中の免疫抑制分子や共刺激分子の遺伝子発現量をreal-timePCR法で評価し、PD-L1発現量をもとに、低、中、高発現モデルから計8モデルを選定し、抗PD-1抗体の投与後の腫瘍増殖を指標に免疫チェックポイント阻害剤感受性・耐性モデルの分類を行った。その結果、感受性3モデル、耐性5モデル見出した。 PD-1抗体の体内動態解析のため、放射性同位体111Inを標識し、感受性および耐性担癌モデルへ投与し、血漿中濃度や腫瘍、肝臓や脾臓など10の正常臓器への移行量を測定した。その結果、感受性モデルと耐性モデルにおいて、体内動態には大きな差はなく、PD-1抗体の腫瘍移行量も同程度であった。そのため、PD-1抗体感受性の差は腫瘍移行後の免疫応答の違いの要因が大きいと考えられた。 体内動態データが複数モデルで蓄積したためPBPKモデルの構築に向けて解析ソフトNappを用いた解析に着手した。今後、詳細な解析とモデル構築を行う予定である。
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