2016年度は,「実際の性能を予測できる新たな近似比評価指標」と「複雑な制約に対する高速な近似アルゴリズム」に取り組んだ.具体的な成果として,単調劣モジュラ関数とM(ナチュラル)凹関数の和で与えられる劣モジュラ関数の最大化に対し,前者の項は1-1/e近似,後者の項は最適値を達成する多項式時間近似アルゴリズムを開発した.このアルゴリズムを応用することで,既存研究で主に扱われてきた指標である曲率(curvature)に基づく近似比評価を一般化することに成功した.これにより,従来手法では,1-1/eより良い近似比評価を与えられなかった関数についても,近似比評価を改善することができる.提案アルゴリズムは,連続貪欲法と呼ばれる手法にM凹関数の凹閉包(concave closure)を組合せたものである.この連続貪欲法では,緩和解を離散解に丸める過程において,M凹関数の凹閉包の値を保存するような丸めアルゴリズムが必要となる.これに対して,既存のマトロイド制約に対するスワップ丸めを一般化した丸めアルゴリズムを開発した.これらの成果を取りまとめ,国際会議へ投稿する予定である.
また,劣モジュラ最適化と機械学習に関連した成果として,整数格子点上の非単調劣モジュラ関数最大化に対する1/2近似アルゴリズムと,多目的単調劣モジュラ最大化に対するリグレット比最小化アルゴリズムを得た.これらの成果は国際会議AAAI 2017に採択され,2017年2月に口頭発表を行った.
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