研究課題/領域番号 |
16H06677
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
有間 英志 東京大学, 情報基盤センター, 特任助教 (50780699)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | ビッグデータ / メモリシステム / キャッシュ |
研究実績の概要 |
本研究では、大規模データ処理を高い電力当たり性能で行うことを目的とし、その際に性能・電力の両面でボトルネックとなるメモリシステムをハードウェア・ソフトウェアの両側から最適化することを目指す。 本年度は、様々な大規模データ処理を行う上で性能ボトルネックとなるページテーブルウォークに着目し、このボトルネック解消のためのキャッシュ制御方式に焦点を当てて研究を行った。具体的には、通常のデータとページテーブルウォーク時にアクセスされるページテーブルエントリ(以下PTE)とを区別してキャッシュ上で管理し、PTEを上位キャッシュに優先的に割り当てることで性能向上を図るというものである。これは、PTEアクセスの局所性が通常のデータアクセスのそれよりも高い反面、キャッシュミスを引き起こす大量のデータアクセスによって、再利用される前にPTEが上位キャッシュから追い出されるという観測に基づく。具体的な制御方式として、既存のLRUスタック上で通常データの挿入位置をLRU側に変更する方式を提案し、キャッシュ階層全体でこの挿入位置の最適化を行った。提案手法をサイクルアキュレートなシミュレーションによって評価した結果、データアクセスのキャッシュヒット率を殆ど下げることなく、PTEアクセスの上位キャッシュ上でのヒット率を10%以上向上させることができ、結果として数%の性能向上を確認した。これらの成果をまとめた論文が査読付きの国際ワークショップ(BPOE-8)に採録されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画であるデータ転送・配置最適化から若干の軌道修正を行い、データ配置最適化に特化した研究を実施したものの、本研究内容に関する論文が査読付き国際ワークショップに再録される等、実績を残すことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
提案手法にはまだ改善の余地があり、より洗練された制御手法の開発を目指す。例えば、通常のデータのLRUスタック上での挿入位置をアプリケーションのフェイズに合わせて動的に調整する手法や、オペレーティングシステム等ソフトウェア側からのアプローチについても考慮する予定である。さらに、メモリシステム全体の電力削減手法についても考慮していく予定である。
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