本研究では、大規模データ処理を高い電力当たり性能で行うことを目的とし、その際に性能・電力の両面でボトルネックとなるメモリシステムについて、ハードウェア・ソフトウェアの両面からの最適化を行った。具体的には、(1)「ページテーブルウォークを考慮したキャッシュマネジメント」及び、(2)「ストレージクラスメモリを有するシステム上での電力割り当て最適化」に焦点を当てて、本年度は研究を実施した。 まず(1)に関しては、昨年度にPTEを上位キャッシュに優先的に割り当てる手法を提案しており、本年度は本提案の拡張を、特に最下位キャッシュを不揮発性メモリで構成するキャッシュ階層を対象として行なった。当該キャッシュ階層では、不揮発性メモリの書き込みエネルギーを抑えるため、書き込みインテンシブなデータも上位のSRAMキャッシュに優先的に割り当てる必要がある。そこで本研究では、上位のSRAMキャッシュにて、PTE、書き込みインテンシブなデータ、及びそれ以外のデータを適切な優先度で割り当てるキャッシュマネジメント手法及び、これを行うためのハードウェア・ソフトウェアフレームワークを考案した。 次に(2)に関しては、ストレージクラスメモリをメインメモリの拡張として用いた計算機システムに焦点を当て、電力効率向上(特に電力制約下での性能向上)を目的として、各構成要素へ電力を適切に割り当てる手法に関する研究を実施した。電力効率向上のためには、性能ボトルネックとなるコンポーネントを特定し、電力を優先的に割り当てる必要がある。本研究では、当該システムにおいて、性能ボトルネックとなるコンポーネントがデータサイズ(問題サイズ)に応じて変化する点に着目し、これを考慮した電力割り当て最適化手法を提案した。さらには、この最適化を行うためのシステムソフトウェアフレームワークも考案した。
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