研究課題/領域番号 |
16H06678
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡田 和也 東京大学, 情報基盤センター, 助教 (10732349)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | SDN / NFV / OAM |
研究実績の概要 |
本研究では、NFVのようにソフトウェア化された通信基盤において障害を迅速に検知可能な監視機構を研究開発する。この監視機構は、ネットワーク上で提供される機能の1) 疎通確認、2) 経路確認、3) 正常性確認を可能とする。NFVでは、これまでハードウェアにより提供されていた様々なネットワーク機能(ルータ, NAT, ファイアウォールなど)が仮想化されたソフトウェアにより提供され、それらを利用者の要望に応じて自由に組み合わせられるようになる。しかし、従来のIPによる転送制御とは異なり、利用者・サービスによって経由する機能が制御される。そのため、既存のIPネットワークで利用されているICMPを元にした死活監視・経路確認ができない。本研究は、NFV環境において障害を検知する監視手法を確立し、安定したNFVサービスの提供を可能とする。 平成28年度は、NFVにおいて求められる監視の要件を明らかにし、機構の設計を詳細化した。具体的には、各種技術標準化団体での関係技術の標準化(ETSIおよびIETF)動向とVNF製品でのパケット処理について調査した。また、通信事業者におけるNFVサービスの想定シナリオと、利用状況、VNFの種類を調査し、機構が満たすべき性能要件(監視すべきVNFの数、障害検知までの許容時間など)を明らかにした。また、NFVの検証環境を構築するためオープンソースソフトウェアを利用したNFV基盤の検証と構築を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度(2016年10月-2017年3月)は、現在欧州電気通信標準化機構 (ETSI), インターネット技術の標準化団体であるInternet Engineering Task Force (IETF) 内で議論されているNFVにおけるoperations, administration and maintenance (OAM)技術の標準化動向について調査した。IETFでは、ネットワークサービスの柔軟な制御技術の確立を目的としているSFC分科会 (SFC WG) 、オーバレイネットワークに関する技術の標準化を行っているNVO3分科会 (NVO3 WG) にて議論されているネットワークの障害検知・監視技術(OAM)の標準化提案状況を調査した。現在はOAMの必要性に関する議論が終わり、個別の技術提案が複数なされている状況であり、実際の手法・実装がまだない。障害検知・監視の対象となるNFV環境は、標準的な実装が存在しない。提案する検知・監視機構の実装と検証を行うために、OPNFVコンソーシアムにて開発が進んでいるオープンソースのクラウドソフトウェア, ネットワーク制御郡 を組み合わせた NFV基盤について検証を行った。しかしながら、対象とするネットワーク機能の多様性から、障害検知機能の設計・実装・検証が遅れており基礎検証ができる状況に至っていない。平成29年度は、初期の実装と検証を早期に完了し、実環境を模倣した環境での検証に移行する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、次の項目に取り組む。 提案する障害検知機能について、次の3指標について性能評価を行う。(1) 検知可能な障害の網羅性、(2)障害の検知性能、(3) VNFの転送性能への影響、(4) 検知可能なネットワーク規模の観点から機構を評価する。評価環境では、典型的なVNFとしてルータ、NAT、ファイアウォール、キャッシュを想定する。正確な性能測定を実施するために商用のトラフィックジェネレータを利用する。具体的には、VNFでのパケット転送停止等の想定される障害を擬似的に発生させ、障害発生から障害検知までの応答時間などを計測する(評価項目(1, 2))。また、VNFの連結数を変化させた場合の障害検知時間を測定する(評価項目(2, 4))。評価項目(3)では、監視機構が各VNFのパケット転送性能への影響(遅延、スループット)を測定する。各評価では、異なるVNFと規模を有する複数のNFV環境が必要となる。そのため、評価実験では情報通信研究機構が有する大規模ネットワークテストベッドであるStarBEDを利用し、NFV環境を構築し効率的な実験を実施する。 前段階では、機構の基本性能を明らかにするためのベンチマークを目的としていることから、画一的なトラフィックでの性能評価となる。しかし、実際のNFV環境では多種多様なユーザトラフィックが転送される。監視機構の実環境での有効性を明らかにするため、全国規模の学術研究ネットワーク上にNFV環境を構築し実験を行う。実験は、各学術組織にて実験協力者(謝金なし)を募り、プライバシに十分に配慮して実施する。実験に用いるNFVには、OPNFV[3]にて実装が進められているNFV環境に提案機構を組み込み利用する。応募者はWIDEネットワークの運用管理にも参加しており、前述の実証実験を構築遂行することができる。
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