本研究では,老朽化が深刻な問題となっている社会インフラに対して高精度な自動点検を実現するために,多種センサを用いたマルチモーダルな自動検査システムの構築を目的とする. 最終年度である本年度は,教師あり学習に基づく診断アルゴリズムの高精度化に取り組むとともに,複数の異なる現場に検査システムを適用させる上で課題となる現場ごとに行うシステムの調整(キャリブレーション)について,キャリブレーションが不要な教師なしの診断法を構築した.教師ありのアプローチでは,熟練点検員の作業データから正しく診断を行うための特徴量を抽出するために,距離画像センサを用いてひび割れの位置を検出し,音響センサの出力を用いて識別した変状のひび割れに対する分布から,従来の打音検査では困難であったひび割れの侵入方向を推定する手法を構築し,高精度化をする検討を行った.教師なしのアプローチでは,打音のメル周波数ケプストラム成分を用いたクラスタリングを行うことで,変状と健状を高精度に分類し,それらの分布に関する事前知識を用いた識別を行うことで,教師信号を用いずに変状位置を推定する手法を構築した. それぞれ,新規に製作したコンクリート供試体および実寸大のトンネルを用いた検証を行い,その有効性を示した.それらの成果は,国内学会において1件の口頭発表,IEEEを含む国際学会に2件採択され,欧文誌 Robotics and Automation Letters の投稿論文1篇が採択された.さらに,本研究成果に関連する日本機械学会誌の論文について,日本機械学会賞(論文)を受賞し,船井学術奨励賞に内定(2018年4月21日受賞予定)するなど,学術的にも高い評価を受けた.
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