研究実績の概要 |
本年度の研究の主たる目的は,実戦環境におけるアスリートの心理状態の変動を個人と,チームスポーツの集団において定量評価することであった. 1)実戦および練習状況での基礎データ収集 平成28年度9月から,バスケットボール中学生2チームの選手,コーチ(成人男性)の計10名ずつを対象に,定例の練習と公式戦(リーグ戦)実施中における心電図と体幹部の加速度データを計測した.計測にはウェアラブル生体電極を内側に搭載したインナーシャツ(C3fit,GoldWin社製)を使用した.胸部につけたトランスミッターから.競技場の隅に設置したスマートフォンにデータを転送して記録した.練習は各チーム5日(5回)の計測を行い,公式戦は各チーム最低3試合を計測した.同時に,練習と試合状況をビデオカメラによって撮影した. 2)心理的要因による心拍数の変動を評価するためのモデルを練習時のデータから構築する. 1)において計測した加速度データから被験者の運動強度を算出し,その強度から運動由来の心拍数変動量を予測するためのモデルを被験者毎に構築した.しかし,トランスミッターとスマートフォンの接続が計測中に途切れることが多くあり,その際のデータが欠損した期間を考量した上で,モデルを構築する新たな方法を考案した(日本野球科学研究会第4回大会にて最優秀発表賞を受賞).現在その手法の精度を検証している.本手法の開発により,アスリートの実戦環境における心理的変動を非侵襲無拘束に抽出することが可能になる可能性がある.また,チームメイトまたは,選手・コーチ間の同期・非同期性を分析することで,集団としての心理状態の振る舞いを評価できる可能性がある.
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