研究課題/領域番号 |
16H06690
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小林 裕央 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (50782778)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | センシング / 心拍変動 / 加速度 / 身体活動量 |
研究実績の概要 |
28年度はセンシング技術を活用した身体活動計測システムのプロトタイプの作成を目標に、先ずは健常成人を対象に身体活動を非拘束かつ簡易に計測できるウェアラブルセンサを用いて、スポーツ活動や日常での身体活動中の生体反応を調べた。成人男女10名にシャツ型のウェアラブルセンサを着てもらい、スポーツ活動中(野球の試合中)の心拍ならびに加速度の変動を計測した結果、激しい運動時にも心拍が検出可能なこと、また、個人によって最大心拍数や心拍変動は異なる一方で、得点が入るなど状況に応じて個人間で共通の心拍変動が見られることが確認された。しかしながら、シャツ型のウェアラブルセンサは腹部側面での加速度計測しかできず、本研究の当初の目的である身体の部位別の活動量を評価できなかったため、シャツ型センサに加えてワイヤレス小型加速度センサを併用して日常生活活動中の心拍、加速度の変動の計測も行った。成人男性3名を対象に日常生活中の心拍変動ならびに体幹部、上肢(利き手側)の加速度を計測し、身体活動量と心拍変動との関連を調べた。計測は3日間行い、被験者には通常の日常生活を送ってもらった。激しい運動の有無による活動量の違いはあったものの、心拍の日間変動はあまり見られず、その変動は体幹部の加速度と関連があった。上肢の加速度の変化は個人差が見られはあったものの、心拍変動との関連はなく、日常での活動量に及ぼす影響は少ないことが示された。以上の結果から、ウェアラブルセンサを活用して、スポーツ活動中や日常生活活動中の心拍変動は個人間で異なるものの、体幹部の加速度を評価することで身体活動量を評価できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画では、28年度に高齢障害者の運動と健康状態に関するアンケートおよび肥満度計測による実態調査を開始する予定だったが、調査を実施する予定だった障害者施設との測定実施および研究協力についての調整が思ったように進まず、28年度での調査実施を断念した。現在は新たに別の施設に調査協力を依頼し調整を行っている段階である。また、実施する測定および聞き取り調査については精査を進めており、調査の実施が決定したときにすぐに実行できるように準備を進めている。 また、28年度はセンシングシステムのプロトタイプの作成およびその検証のために、ウェアラブルセンサを用いた身体活動量の計測について健常者を対象に測定を行ったが、本研究の研究課題のひとつである普段、車椅子を利用している高齢障害者の日常身体活動の実態調査を実施するための車椅子利用時の測定検証を実施することができなかった。また、動作解析システムとの比較検証も実施できなかったことから、作成したプロトタイプで計測した各数値の妥当性の検証や問題点の抽出がまだ十分でないため、29年度に実施する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
29年度は先ず、アンケートおよび肥満度計測による実態調査を優先的に進め、調査協力をしてもらえる障害者施設が決定次第、速やかに調査を開始する。また、調査を進めるのと同時に本研究では年齢層別、および障害の程度別の実態を明らかにすることを目標としているため、複数施設に調査協力を依頼して可能な限り調査の実施を承認してもらえるよう進めていく。 プロトタイプの作成については妥当性の検証を進め、車椅子利用者の身体活動量が評価できるようにし、高齢障害者の日常身体活動の実態を明らかにする。これらを実施して得られたデータはまとめ次第、国内外に発表できるように進める。
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