研究実績の概要 |
本研究では、申請者らがこれまでに見出した熱揺らぎを利用する核酸・タンパク質相互作用の概念(Imashimizu et al., PNAS 2016)に基づき、核酸医薬の分子設計を行うことを目的とした。 本研究の実績を以下に示す。 1. 多様な生理・薬理機能を生み出す RNA アプタマーの高い標的分子結合性を分子科学に則して理解するため、熱揺らぎによる構造不均質性の概念を導入した。具体的には、RNAアプタマーは、熱揺らぎで容易に変換できる2次構造の数を増やすことで標的タンパク質との結合親和性を高めるという分子モデルを提案した。 2. ランダム配列RNAプールから1回の選抜のみでアプタマーを取得する新しい方法を開発し、アプタマー取得法の脱ブラックボックス化を行った。具体的には、選抜に用いるRNAプールの中で、アプタマー候補となる標的分子と安定な複合体を形成するRNAを残し、それ以外のRNAをほぼ完全に酵素処理により除去することができる。ここで得られるアプタマー候補分子は、通常取り扱いができない程少数である。しかし、続く工程で速やかに既知の配列から成る核酸を大量に投入することで極少数のアプタマーを保護し、核酸物質として簡便な扱いができるようにしている。大量に投入した既知の配列は、次の過程で行われる酵素処理により簡便かつ大幅に減らすことができる。残存する既知の配列は、ハイスループットDNAシーケンシングにより物質から情報に変換後、情報として簡便に除去することができる。以上の作業により、特殊な仮定・技術を用いないで、簡便にRNAプール中に極めて小さい比率で存在するアプタマーを同定することができる。 3. ヒトTGF-β1 とヒトthrombin の各タンパク質に特異的に結合するRNA アプタマーを複数作製した。
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