研究課題/領域番号 |
16H06693
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中木戸 誠 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任研究員 (80784511)
|
研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
|
キーワード | 分子認識 / 多重特異性 / 酵素 |
研究実績の概要 |
本研究では、酵素の持つ多重特異性の分子機構についてアミノ酸残基レベルで知見を得ることを目的とし、そのために多様な蛋白質の翻訳後修飾を担うメチル基転移酵素を題材に研究を行う。特にメチル基転移酵素SMYD2を標的とし、これまでに報告されている各種基質蛋白質との相互作用について、結合界面に存在するアミノ酸残基に変異を導入した組換え蛋白質を調製する。それらを用いて物理化学的/生化学的手法によって相互作用解析を行うことにより基質認識を担うアミノ酸残基を特定するとともに相互作用への寄与を定量的に解析し、SMYD2が多様な基質を特異的に認識する分子機構について詳細に記述する。 本年度の実績として、まずSMYD2およびSMYD2とペプチドでの共結晶構造が明らかとなっている基質について全長蛋白質としてクローニングを行い、可溶性タグを付加させることによって大腸菌発現系による可溶性蛋白質としての発現が確認された。さらに各種クロマトグラフィーを用いた精製を行うことにより、高純度の酵素および基質蛋白質を組換え蛋白質として調製する系を構築した。また、所属研究室で保有する種々の分析装置を用いて得られた蛋白質の物性を評価するとともに、SMYD2と基質間の相互作用の速度論的解析系を構築した。さらに、補因子であるSAMの存在・非存在下においてSMYD2と基質蛋白質の相互作用を速度論的に解析することにより、SAM結合のメチル化転移活性のみならずSMYD2による基質認識への寄与が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、酵素および基質の発現・精製系を構築することに成功した。さらに、物理化学的手法を用いた相互作用解析系についても構築することができた。さらに、放射性同位体を用いた酵素活性の解析系についても系の構築に着手している。現時点で変異体を用いた相互作用解析まではたどり着いていないものの、今後野生型と同じ手法によって組換え蛋白質を調製し、相互作用解析を行っていくことができると考えられるため、ほぼ当初の計画通り進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、結晶構造情報を基にSMYD2の分子認識に関与していると考えられる変異体の作製を進める。今年度構築した大腸菌発現系による発現・精製を行い、組換え蛋白質として各種変異体を調製する。得られた変異体を用いて物理化学的手法を用いた相互作用解析を行い、各アミノ酸残基の基質認識への寄与を定量的に記述していく。また、それぞれの変異体について放射性同位体を用いたin vitroでのメチル基転位反応実験を行うことによってメチル基転移活性について解析し、それぞれの基質認識とメチル基転移活性の相関について精査していく。 続いて、上記のp53およびERαとの結合に重要な役割を果たしているアミノ酸残基を置換した変異体と各基質との相互作用について物理化学的解析を行う。それぞれの基質との相互作用に寄与するアミノ酸残基の違いから各基質との相互作用様式について明らかにし、SMYD2が多様な基質を特異的に認識する分子機構について詳細に記述する。
|