前年度に引き続き、全国各地に伝来している、戦国期の足利将軍(10代義稙から15代義昭まで)の発給文書と、それに付随して出された将軍側近の文書、各地の大名・国衆から取次を務める側近に対して出された文書、関連する文書・古記録の記述の集積を行った。具体的な作業としては、刊行された自治体史や資料集に収録された史料の確認・抽出作業と、いまだ活字への翻刻がなされていない史料の博捜のために、東京大学史料編纂所に架蔵されている影写本・謄写本・写真帳のめくり作業をした。 遠隔地の博物館・資料館・図書館への調査については、岐阜県歴史資料館・岐阜市歴史博物館・大垣市立図書館・島根県立図書館・松江市立松江歴史館・京都大学総合博物館などへ赴き、所蔵史料・寄託史料などを閲覧させてもらい、調査をした。 今年度の成果としては、将軍そのものではないが、将軍権力に大きく関わる奉公衆・外様衆についてまとめた著書『室町幕府の外様衆と奉公衆』を2018年4月に刊行した。また9代義凞期に側近として活躍した結城氏について、「室町幕府奉公衆結城氏の基礎的研究」(戦国史研究会編『戦国期政治史論集 西国編』収録)として、室町~戦国期を通じた動向と系譜を検討した論文を呈した。また『東京大学日本史学研究室紀要』22号に、「「大和家蔵書」所収「大館伊予守尚氏入道常興筆記」」を翻刻して史料紹介をしている。そして義稙及びその父義視の発給文書を、戦国史研究会から現在出しているシリーズ『戦国史研究史料集』にまとめて翻刻し、刊行する予定になっている。
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