昨今、選挙権年齢・成年年齢・少年法適用年齢などについての引下げの実施や議論が活発化しており、子ども(未成年者)の法的地位のあり方、子どもと大人の境目のあり方について、社会的に大きな注目が集まっている。本研究は、子ども(未成年者)の法的地位をめぐる日本人の法意識を実証的に解明したうえで、急務となっている子どもの法的地位についての体系的な理論構築を行い、政策提言を行うことを目的としている。 2017年度は、次の3つを行った。第一に、昨年度に実施した一般人の意識調査(一般人800名に、主な法定年齢(26項目)が何歳であるべきかなどについて網羅的に回答してもらったオンライン調査)によって収集した量的データを引き続き分析した。この成果の一部は、2017年5月の日本法社会学会学術大会にて研究報告を行い、2018年3月に論文を公表した(「子どもの各種法定年齢をめぐる一般人の法意識」法社会学84号203-240頁)。第二に、子どもが深く関連する具体的な法分野の一つとして、親の離婚(親権紛争)に焦点を当てて、国内の実務家を対象とするインタビュー調査を実施した。昨年度に引き続き、2017年度も約10名の実務家のインタビューを実施し、実務家の法意識に関する質的データを収集し、分析を行った。その研究成果の一部は、2017年6月のLaw and Society Association(米国法社会学会)や12月のAsian Law and Society Association(アジア法社会学会)の学術大会等において研究報告を行った。第三に、これらの調査の総合的な分析結果やその他の社会科学的な知見を踏まえて、子どもの法的地位についての新たな理論の試案を構築することができた。この第三の研究成果については、近く論文を公表する予定である。
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