本研究は、上場会社の経営者と監督者の責任法制および責任からの救済法制の在り方について、アメリカ法、イギリス法およびドイツ法との比較を通して、日本の会社法が抱える課題を明らかにし、これを検討するものである。併せて、上場会社の経営に対する会社内部における監督の在り方についても、会社内部における権限分配を含め、包括的に検討した。これらにより、本研究は、学術的貢献とともに、今後の会社法制の見直しにも示唆のあるものとなっている。 代表者は、その博士論文「上場会社の経営監督における法的課題――非業務執行役員の責任と救済を中心に――」において、既にアメリカ法、イギリス法および日本法を対象とした比較法研究により、社外取締役を始めとする監督者における責任法制と責任からの救済法制の在り方について論じたところである。本研究は、当該博士論文を発展させるものであり、監督者に加えて経営者を含めるとともに、ドイツ法にも比較法の対象を拡大したものとなった。 本研究においては、上場会社の経営者と監督者の責任法制として、各法域における対会社責任と、不実開示の場面を例とした対第三者責任を分析した。前者については、これを①決定が問題となる場面、②他の取締役の行為が問題となる場面および③従業員等の行為が問題となる場面に区分し、両者の責任法制を具体的に分析した。後者については、発行市場および流通市場における不実開示の場面を分析した。責任からの救済法制については、特に会社補償制度および会社補償の在り方と、会社役員賠償責任保険に関する法制とを分析した。
|