研究課題/領域番号 |
16H06701
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長越 柚季 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教 (20781090)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 知的財産法 / パテントプール / ライセンス契約 / 技術移転 |
研究実績の概要 |
本研究は、地球環境問題の解決のため、環境技術を有する先進国から新興国・途上国への円滑な技術移転を支える国際技術移転のための新たなパテントプール・プラットフォームを形成し、それを機能させるための国際的枠組みに関する提言を行うことを目的としている。パテントプールの法技術の応用は従前より試みられてきたが、未だ萌芽的な段階にあり、実績は乏しい。本研究は、従前の取り組みの問題点を洗い出し、それを改善し、またその実現を阻害する新興国・途上国の国内法的な阻害要因を除去して、新たな技術移転プラットフォームを機能させるための国際的な枠組みに関する提言を行うものである。 今年度は、主に判例・法令・政策文書・公開されているデータ等の一次文献及び他の研究者によって書かれた二次的文献の講読と、国際学会参加による情報収集、政策担当者や実務家へのインタビューを通じて研究を行った。文献の多くは勤務先である東大から利用可能なデータベースおよびミュンヘンのマックス・プランク研究所図書館を通じて収集した。研究対象として扱った中国・米国・ドイツに関してはフィールドワークを行い、裁判官、研究者、実務家等からの情報収集を行った。 また、実際に環境保護に資する原子力技術の国際的なライセンシング・プラットフォームの形成を検討している国際原子力機関と連携し、そのプラットフォーム形成の準備過程に参画することで、実務上の課題に触れ、その解決策を模索した。 本年度行った研究の一部は、研究代表者の博士論文の一部として発表したほか、2016年11月に開催された国際原子力機関主催の国際学会においても口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は(i) これまでの枠組が不十分な成果しかもたらしてこなかった原因の分析、(ii) 環境技術の国際移転を支えるライセンシング・プラットフォームの構想、(iii)国際的なライセンス規制の制定の経緯、現状に対する評価、(iv)日本、中国・欧州・ガーナのライセンス関連の国内法の制定の経緯、現状に対する評価、(v) 国内法における問題点の洗い出し、を行った。このうち、(iii)及び(iv)は、(v)の前提条件として研究が必要であるとの考えから、計画よりも研究内容を広げたものである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、上記の研究成果を踏まえて、(vi)国際法・国内法の現行法上の規制を遵守しつつ実効的なプラットフォームを実現をするための国際的な実行の枠組のあり方、並びに(vii)実務上の慣行と法律(特に途上国国内法)との不調和を最小限に抑えるような法制度の提言を行う。 昨年度に引き続き各国の知的財産法専門家と協力して実務の最新の動向を把握し、研究の成果を論文にまとめて査読付き英文誌に投稿する予定である。
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