本研究では、近代日本政治において競争や利益の観念がどのように捉えられ、実践されたのかを、陸奥宗光を中心に分析して明らかにすることを目指した。陸奥の思想形成という点では、従来論じられてきたような功利主義という特定の思想ではなく、実践的関心のなかからある種の思想が立ち現われてくることを、幕末・明治初期の思想潮流と重ね合わせながら明らかにした。そして、競争概念によって基礎づけられる代議政治は、陸奥が推進して日本でも生じつつあったがその死とともに終わり、調和を重視する伊藤博文が国政に政党を取り込んでいったことを示した。
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