本研究の目的は、宇宙の星形成活動の最盛期(赤方偏移3付近)において、銀河形成の環境依存性を明らかにすることである。この時代の宇宙には多数の銀河が群れ集まっている、原始銀河団と呼ばれる場所が存在し、当時の銀河形成、星形成活動の主要な場であったと考えられている。しかし、中でも最も活発に星形成を行う銀河種族(爆発的星形成銀河、あるいはサブミリ波銀河)は大量の塵によって星からの光が隠されてしまい、可視光や近赤外線ではその姿を捉えることができていなかった。本研究ではこれら「隠された」銀河種族の理解を追求している。
本研究では赤方偏移3.1の原始銀河団SSA22の中心部の探査を推進した。この時代において最も高密度な環境であり、銀河形成と環境の関係を調べる上で最適の領域である。加えて、2015年に申請者によって極めて広く(7平方分)、深い、波長1.1mmの観測が実行されている。このようなアルマ深宇宙探査領域(アルマディープフィールド)は世界でも未だ数例しか実行されておらず、高密度環境を対象にしたものでは唯一のデータである。研究は非常に順調に推移した。申請者が筆頭提案者となって獲得したアルマ望遠鏡のデータの解析を精力的に進め、ターゲットとした原始銀河団におけるサブミリ波銀河を多数検出し、その分布や大きさ、星形成活動の活発さといった物理的性質の統計的な調査を進めることができた。得られた成果に基づき、筆頭著者として査読論文を2本出版し、4件の国際会議における研究発表を行った(招待講演1件を含む)。
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