研究課題/領域番号 |
16H06719
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
巽 瑛理 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (60623197)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 小惑星 / 衝突実験 / 質量分布 |
研究実績の概要 |
本研究では小惑星や彗星の衝突による大気散逸の影響を評価することを目的としている。小惑星・彗星による衝突により地球型惑星の表層で高温・高圧の蒸気雲が発生することが実験や数値計算から知られている。この蒸気雲の運動を明らかにしたいと考えている。 本年度は主にシュリーレン観察装置の開発のために光学系の設計と調整を行なった。さらに、必要な高速度カメラの性能を評価し、選定を行った。静止画ではシュリーレン方による密度分布を得られることが確認できた。 また、本研究では特に衝突頻度がオーダーで大きいと考えられる、小さな小惑星(<1km)の衝突に着目している。小惑星メインベルトにおけるこのサイズの小惑星の分布は観測が難しく明らかになっていない。本研究遂行にあたって、重要な要素である小惑星インパクターのサイズ分布を明らかにするために、小惑星の質量変化に着目した。具体的には小惑星の質量損失率を明らかにし、小さな小惑星のサイズ分布へ議論を広げる。小惑星はサイズにより表面や内部の様相が大きく異なることが近年の探査より明らかになってきた。小さな小惑星はラブルパイル天体である可能性が高く、はやぶさ探査機が訪れた小惑星イトカワ(直径約300m)のように表面に多くの岩塊が存在する可能性が高い。そのような場合におけるクレーターの掘削効率は小惑星へのインパクターのサイズと表面岩石のサイズ比に依存し、小さなインパクターでは掘削効率が低下することを示した。つまり、ラブルパイル小惑星はこれまで思われていたよりも比較的長い衝突寿命をもつ可能性が示唆された。本研究成果について学会発表及び学術誌に論文投稿を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
シュリーレン装置開発において、当初想定していた機種の性能では光量が不足し、適正な観測ができないことがわかった。そのため、機能追加を行ったり光量の調整方法を工夫したりした。本研究ではシュリーレン観測をすることがメインであるが28年度内に実験装置が完成できなかった。 しかし、この研究の一部である小惑星質量の進化を議論する実験においては高速度カメラを有効活用することができ、成果を出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
高速度現象を捉えるためにシュリーレン装置の改良が必要である。特に、CCD感度及び露光時間の最適化が必要である。また、もしそれでも機材の能力が不足である場合には高性能な機材のレンタルも視野に入れる。 現状ではシュリーレン装置によって蒸気雲の観測まで達成されていないため、今後はシュリーレン装置開発を進めていくと同時に、確実に成果を出せると考えられるインパクター小惑星の質量進化についての実験も進めていきたいと考えている。小惑星の質量進化を明らかにするためには、小惑星から放出されるイジェクタ観測が重要となる。固体イジェクタ観測観測には本年度購入した高速度カメラは十分な性能を持っており、詳細な観測が可能である。
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