研究課題
地球上の多様性において重要な位置を占める後生動物も陸上植物も、有性生殖においてはサイズの大きい配偶子である卵と小さい配偶子である精子を作ることで実現している。しかし真核生物の系統関係に照らして有性生殖はもともと両交配型の配偶子サイズに差のない同型配偶が祖先的であったことが知られている。本研究課題は、同型配偶と異型配偶の生物間でゲノムとトランスクリプトームの情報を比較することで、進化生物学の重要な問題である、雌雄の二極化という大問題を分子生物学的に明らかにすることを主眼としている。その材料として本研究では、単細胞同型配偶緑藻のモデル生物であるクラミドモナスに近縁で初期多細胞生物のモデルとして注目されている卵生殖のボルボックスを含む群体性ボルボックス目緑藻の系統関係に着目し、同型配偶ヤマギシエラと異型配偶ユードリナのゲノム配列の遺伝子情報アノテーションを整備し、かつ両生物の有性生殖生活環の各ステージにわたるRNA-seqリードを産生して、各々の性・交配型に特異的にコードされた遺伝子群や、各々の性・交配型の有性生殖過程において特異的に発現する遺伝子群を探索・同定し、これらを同型配偶と異型配偶の生物の間で比較することによって、派生型である異型配偶の出現に対してどのような遺伝子群がリクルートされたのかをあぶり出すことが期待されるものである。本研究期間においては、同型配偶ヤマギシエラと異型配偶ユードリナのゲノム配列を計算機的に解析して遺伝子モデルを構築し、両生物両性の性決定領域ゲノム配列のアノテーションを完了しこれを報告した (Hamaji et al 2018 Commun Biol)。これを基盤として、トランスクリプトームリードの産生と雌雄二極化原因遺伝子群の推定を目指した。
4: 遅れている
本研究期間に予定したトランスクリプトームリードの産生については前段階である大量培養・有性生殖誘導条件に予期しないバラツキを生じており確定に至っていない。
引き続き条件を検討していき、同時に既に得られているクラミドモナスやボルボックスの無性・有性生殖トランスクリプトーム (Lopez, Hamaji et al 2015 Plant Physiol; Joo, Nishimura et al 2017 Plant Physiol; 浜地ら・未発表)のデータを元に候補遺伝子を推定していく。逆遺伝学的・分子遺伝学的手法についてはクラミドモナスで可能になったCRISPR法 (Greiner et al 2017 Plant Cell) の再現で有望な結果を得つつあり、すぐに推定された候補遺伝子の破壊を試みていく。
すべて 2018 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 6件、 招待講演 3件) 備考 (2件)
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https://natureecoevocommunity.nature.com/users/76336-hisayoshi-nozaki/posts/30614-a-small-blueprint-of-adam-unveiled-based-on-de-novo-assemblies-of-four-nuclear-whole-genomes