研究実績の概要 |
現在、地球上で繁栄している真核生物の中でも、高度に多様化している陸上植物と後生動物の双方ともに共通して、雌雄の配偶子サイズと運動能力に顕著な差の認められる「卵生殖」を行う。これら卵生殖は、祖先的で両性の配偶子サイズと運動能力に差のない同型配偶の生物群のなかから、両系統で独立に出現していることから、卵生殖は多様性をもたらす原動力の候補として進化生物学の大問題の一つとして大きな興味を持たれている。しかしながら両系統ともにその卵生殖の獲得時期は古く、祖先的形質を残した近縁な姉妹群が現存しておらず、分子生物学的な比較解析が不可能である。 祖先型の同型配偶の中から派生的な異型配偶が出現した過程が全真核生物の系統のうちで唯一現 存している、ボルボックス系列緑藻での有性生殖の進化生物学的研究を背景として、同型配偶生物と異型配偶生物のの栄養生殖と有性生殖の間で遺伝子発現プロファイルを比較することにより、雌雄性の進化の 直接の原因となった遺伝子(群)を特定し、分子遺伝学的手法で検証することを目的として研究を進めた。具体的には、本研究ではこれを解明するために性特異的発現遺伝子の機能解析については、現在までに既に公表されているクラミドモナス配偶子特異的遺伝子発現プロファイル(Joo, Nishimura, et al 2017 Plant Physiol )をベースとして、クラミドモナスにおけるゲノム編集手法(Greiner et al 2017 Plant Cell )の応用による遺伝子破壊を進め、その配偶子分化における寄与の検証を試みた。また同時に、クラミドモナスにおける性決定転写因子MIDの相互作用因子を探索するために現在、酵母ツーハイブリッド法を応用した相互作用解析を進めた。
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