研究課題/領域番号 |
16H06744
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山崎 翔 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (00779407)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 血球分化能 / 細胞増殖能 |
研究実績の概要 |
正常iPS細胞においてはCLISPR/Cas9システムを用いたSLITRK4のノックアウトクローンを得ることができなかった。そこで正常iPS細胞と慢性骨髄単球性白血病(CMML)由来iPS細胞にそれぞれレトロウイルスベクターを用いてSLITRK4の転写抑制実験を行ったが、本来であれば不死化することが予測される、scramble配列に対するノックダウンベクターを感染させたCMML由来iPS細胞で不死化が確認されず、トランスダクションによるウイルス毒性の影響が考えられた。現在は、iPS細胞を血球分化した後にノックダウンする方法やレンチウイルスベクターを用いたノックダウン方法に切り替え、解析を進めている。 正常マウスの骨髄より採取した幼若造血細胞にレトロウイルスベクターを用いてSLITRK4を導入し半固形培地で培養したが、コロニー形成能や長期間増殖能には変化が見られなかった。また、細胞形態や表面抗原を解析したが、コントロールと比較して違いを認めなかった。 細胞株OCI-AML2、OCI-AML3、MOLM13、THP1においてSLITRK4が高発現していることを確認できたため、以上の4つの細胞株を用いてレトロウイルスベクターによる転写抑制実験を行った。OCI-AML3においては細胞増殖抑制効果が見られたため、下流シグナルの探索としてmRNAを抽出し遺伝子発現プロファイルを確認している。 また、CMML症例の患者検体を3例収集し、単核球分離後に凍結保存した。一部からCD34陽性細胞をソートし、RNAを抽出した後にcDNAへ逆転写しSLITRK4の発現量を調べたところ、健常検体のCD34陽性細胞と比較して発現が高いことを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたレトロウイルスベクターを用いた方法では、iPS細胞での転写抑制実験がうまくいかなかったが、iPS細胞を血球に分化した後にノックダウンする方法やレンチウイルスベクターを用いた方法を使うことにより克服することができそうである。 また、骨髄異形成症候群モデルであるNHD13マウスが使用可能となったため、マウス造血器腫瘍モデルを用いた機能解析を進めることができる。
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今後の研究の推進方策 |
骨髄異形成症候群モデルのトランスジェニックマウスを用いてSLITRK4の機能解析を進めるとともに、引き続きSLITRK4の下流シグナルの探索を進める。 SLITRKファミリーは一回膜タンパク質であり、SLITRK4も細胞内において足場タンパク質と共在していることが考えられる。CMML由来iPS細胞を血球分化した造血前駆細胞と健常対照を用いて、足場タンパク質の有無や共在の有無を免疫染色で確認する。 引き続き臨床検体を収集し、治療標的が定まった時点でこれらの試料を用いて検証を行う。
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