本研究では、BMPが関係する細胞分化・運命決定において鍵となるエピジェネティック因子の同定を目指した。平成28年度は、Smad1/5のChIP-seqデータから予想されるエピジェネティック因子に関して、Smad蛋白と相互作用するか否かを指標にスクリーニングを進め、脱メチル化酵素Aを同定した。この酵素Aの既知の機能からマウスES細胞のデータをレビューしたところ、ヒストン修飾等で整合性のある結果が認められた。
1)SmadノックアウトES細胞におけるヒストンの修飾などのエピジェネティックマーカーの評価:上記脱メチル化酵素Aに関して、既に報告されているヒストン修飾マーカーのChIP-seqデータを取得して解析を進めた。
2)転写因子Smadとゲノム上で相互作用するエピジェネティック因子の同定と、マウスES細胞からの分化系での検討:Smadと相互作用するエピジェネティック因子に関して、予想されるコンプレックスに含まれる因子について解析を行った。既存のコンストラクトの他、予想されるものを新たにクローニングして解析を行った。その結果、脱メチル化酵素AがSmad蛋白と結合することを見出した。この蛋白に関しては既にノックアウトES細胞も報告されており、Smad1/5ノックアウトES細胞とは逆の表現型を呈すことが予想された。このことからSmadと蛋白Aは、拮抗的に作用することが考えられた。これに合致するように、Smad-蛋白Aの相互作用の結果、蛋白A-ヒストンの結合が減弱する傾向にあることを、精製蛋白を用いたin vitroの系とHEK293T細胞の核抽出物を用いた系の2つで確認した。
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