研究課題/領域番号 |
16H06747
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
半谷 匠 東京大学, 生産技術研究所, 特任研究員 (50785350)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 炎症 / 生体分子 |
研究実績の概要 |
前年度の研究実施計画に基づき、TNF-αの誘導を行う新規DAMPsの同定を行った。マウス大腸癌細胞株であるSL4細胞を、prostaglandin E2 (PGE2) 産生の阻害剤であるインドメタシンで処理した後ネクローシスを惹起し、その上清中のTNF-αを誘導する分子を同定した。これまでに、ゲル濾過クロマトグラフィーによって分離した各々の分画をマウス腹腔マクロファージに添加すると、約100kDa以下の分子を含む分画にTNF-αの誘導能が存在するという結果を得ている。これに陽イオンおよび陰イオン交換クロマトグラフィーを行うことで目的分子の精製を進め、銀染色を行ったところ、TNF-α誘導活性とタンパク量が相関するバンドが複数個見られた。新規DAMPs分子はタンパク質であるという知見が得られているために、これらのバンドに対して質量分析を行った。質量分析の結果、得られた候補分子につき、SL4細胞にレトロウイルスベクターにより候補分子の安定ノックダウン株を樹立した。これらの細胞株を用いてネクローシス細胞上清を作成し、TNF-α誘導能が減弱するか否かqRT-PCR法によって検討したところ、一つの分子(以後分子Xと称する)に対する安定ノックダウン株において、TNF-α誘導能の減弱が見られた。この分子の遺伝子組み換え体をマウス腹腔マクロファージに加えると、TNF-α mRNAの誘導が認められ、分子Xが新規DAMPであることが示唆された。この遺伝子組み換え体はタグタンパクが付属しており、本来の機能とは異なる可能性もあるため、タグタンパクのない、遺伝子組み換え体を新たに作成し、現在そのDAMPとしての機能を確認している。また、分子Xは大腸癌において、高発現していることが知られているため、分子Xの発現を欠損させたSL4細胞細胞を作成し、大腸癌の進展における役割についても検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではネクローシス細胞より放出され、TNF-αの誘導を行うような新規DAMPsの同定を目指している。各種クロマトグラフィーを組み合わせることで、ネクローシス細胞上清中のTNF-α誘導能を持つ分画を精製し、質量分析を行った。質量分析により得られた候補分子の安定ノックダウン株を作成し、新規DAMPの候補として分子Xを得ることが出来た。分子Xの遺伝子組み換え体を用いて、マウス腹腔マクロファージを刺激するとTNF-α mRNAの誘導が認められ、分子Xが炎症応答を惹起するDAMPであることが示唆された。分子XはこれまでDAMPs分子としての機能は知られておらず、新規DAMPである可能性が高い。 前年度計画していた、分子Xがネクローシス以外のどのような細胞死で放出されるか、またどのような受容体、シグナル経路を介してTNF-αの誘導を行うかについては、現在解析を進めている。 また、分子Xは大腸癌を含めた種々の癌腫で高発現を認めることが報告されていることから、分子XがDAMPとして、発癌および癌の病態進展に関与している可能性が高い。 このように、前年度計画した一部の実験について結果が得られていないものの、新規DAMPの同定およびその病態との関与が示唆されており、概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
分子XのDAMP分子としての機能について詳細な検討を行う。分子Xがネクローシス以外のどのような細胞死で放出されるか、ELISAを用いて検討を行う。また、ネクローシス細胞上清はアダプター分子であるMyD88を介してTNF-α誘導を行うという知見を得ており、分子XがMyD88をアダプターとして用いる受容体によって認識されるか否か、これらの受容体のノックアウトマウス由来の細胞を用いて検討する。 また、分子Xの生体内での機能を検討する。分子Xのコンベンショナルノックアウトマウスは胎性致死であるため、コンディショナルノックアウトマウスを用いる。同マウスは既に樹立されており、種々のCreリコンビナーゼを持つマウスと交配することで、時期、臓器特異的な分子Xの機能を解析する。具体的にはこれらのマウスにおいて、プリスタンによるSLEモデルやCIAによる関節リウマチモデルなどの自己免疫疾患、およびdiethylnitrosamineを用いた肝細胞癌モデルなどのモデルで、病態が改善するか否か検討する。また、LPS shockにおける生存率、臓器障害が改善するか否かの検討も行う。 これらの解析を踏まえて論文の作成を行う予定である。
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