研究実績の概要 |
アフリカツメガエル卵母細胞にW279X, R648X, R704X変異を導入したCLC5蛋白を発現させ, 二電極膜電位固定法を用いて電気特性を同定したところ, 野生型CLC5では強い外向き整流性のIV曲線が得られた. 一方, ナンセンス変異体ではCLC5電流が消失した. 細胞培養時にPTC124を添加して72時間後のIV曲線ではリードスルーによるCLC5電流の回復を認めなかった. 次にHEK293細胞を用いてリードスルー効果を検証した. CLC5をPTC124存在/非存在下で導入し, Western blotting法により蛋白半定量を行ったところ, R704XではCLC-5蛋白発現量の回復を認めた. そしてR704X-HEK293細胞の低浸透圧誘導性V-ATPase活性を測定したところ, PTC124によるV-ATPase活性回復を認めた. 次にMODY3とV-ATPase/CLC5機能的共役機構の検証を行った. まず近位尿細管(PT)におけるインスリンとV-ATPaseの関連を明らかにするため, マウスPTとBCECF-AMを用いた細胞内pH測定を行い, 還流液のNa除去によりNHE3活性を反映した細胞内pH低下後, bafilomycin感受性の細胞内pH回復過程が観察され, 反応の最大速度をV-ATPase活性と定義した. インスリン添加によりPT V-ATPaseは活性化し, Akt阻害剤の添加により著明に減少したことから, インスリンがPI3K/Akt経路を介してPT V-ATPaseを活性化させることが明らかになった. 最後にメガリン依存性エンドサイトーシスの障害の有無について, ラット卵黄嚢由来L2細胞を用いた検討を試みたが環境要因により同細胞の継代が困難であった. 以上よりPTC124はナンセンス変異を原因とするDent病に有効である可能性が示唆された.
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