研究課題/領域番号 |
16H06754
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
赤股 要 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (00779788)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 全身性強皮症 / 全身性エリテマトーデス / 重複症候群 / Fli1 / KLF5 / TLR7 |
研究実績の概要 |
Fli1ヘテロ欠損マウスとKlf5ヘテロ欠損マウスを交配させ、新規強皮症モデルマウス(Klf5+/-; Fli1+/-マウス)を作成し、繁殖させた。Klf5+/-; Fli1+/-マウスについては、過去の報告で全身性強皮症の主要3病態(免疫異常、線維化、血管障害)が再現されることが判明している(Noda S, et al. Nature Communications 2014;5:5797)。本研究では、このKlf5+/-; Fli1+/-マウスを用いて、イミキモド外用を行うことによって、全身性強皮症と全身性エリテマトーデスの重複症候群モデルマウスを作成し、その病態解析を行っていくため、まずはイミキモド外用していないKlf5+/-; Fli1+/-マウスにおいて、全身性エリテマトーデスで侵されうる他の臓器について解析を行った。 Klf5+/-; Fli1+/-マウスの腸管平滑筋細胞において、SMembの発現が亢進するとともに、SMMHCやSm22alphaの発現が低下していた。これにより、腸管平滑筋細胞の形質が、より分化しており収縮タンパク質などの発現が多いDifferentiated/Contractileな形質から、より未分化で増殖能を有するDifferentiated /Syntheticな形質へと変化していることが分かった。また、心臓においては、小型から中型血管の血管内皮細胞でApoptosisが亢進していることが判明した。さらに心筋においても、特に血管周囲を中心として線維化が見られることが分かった。 これらの予備解析で判明したKlf5+/-; Fli1+/-マウスの基礎病態をもとに、イミキモド外用により強皮症と全身性エリテマトーデスの重複症候群に類似した病態の出現が起こるかにつき、検討を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規強皮症モデルマウス(Klf5+/-; Fli1+/-マウス)において、強皮症主要3病態である免疫異常、線維化、血管障害については既に報告したが、今回新たに腸管や心臓など、全身性エリテマトーデスで侵されうる心臓や腸管について解析し、全身性強皮症に特徴的と考えられる所見を得ることができた。これは重複症候群モデルマウスを作成した際に比較検討できる判断材料に成り得る。
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今後の研究の推進方策 |
今後はKlf5+/-; Fli1+/-マウスをさらに繁殖し、強皮症と全身性エリテマトーデスの重複症候群モデルマウスを実際に作成し、各臓器及び、その構成する細胞が全身性強皮症の病態または全身性エリテマトーデスの病態を有しているか確認し、それらが互いに干渉しあうメカニズムと、重複症候群の治療戦略につき検討する。 実際、Klf5+/-; Fli1+/-マウスにおいて今まで検討されていなかった腸管や心臓にも強皮症に特徴的な所見がみられたため、重複症候群マウスはまた違った形質を表現している可能性が高いと考えている。
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